300字ss参加作

決意(第十九回 お題「別れ」)

 何年も開けたことがない箱を開けると、その隅から小さい箱が転がり出した。そのフタを開けると、赤い折り紙のツルが在った。下からは、折りたたんだ紙が出てくる。

 広げた紙に踊るカラフルな平仮名を目で追いかけていると、吐き気が胃からせり上がってきた。

 私には、幼稚園からの幼馴染みがいる。他の子と仲良くしようとすると、その子が相手に悪口を吹き込んだりして相手を離れさせてしまうので、私はその子とだけ遊ぶしかなかった。

 手紙にある「わたしたち ずっといっしょだよ」という文が、途轍もなく重い。

 どんな手を使っても、あの子を私からひきはがさないと、私は好きに生きられない。

 私は折りヅルをぐしゃりと握りつぶした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る