東風吹かば(第二十回 お題「風」)
客先のビルの外を出ると、気温はぐんと下がっていた。
夜はもっと寒くなるだろう。想像だけでげんなりしながら、マフラーを巻き直して歩き出す。
こう寒いと、コンクリートとガラスで固められたオフィス街はいっそう冷たく感じられる。できるだけ早くここから抜け出そうと、早足になってくる。
風が吹き抜ける。
マフラーの隙間にも寒気が入りこんで、首をすくめてしまう。だが、顔に吹き付けた風に思わず顔を上げた。
横のビルの前の植え込みの小さな樹。こんなに小さい沈丁花でも、風に乗って流れてきた薫りは充分強い。
この花が咲いたなら、寒いのももあと一ヶ月くらいの辛抱だ。寒さ耐性が増えるわけではないが、少しだけ助かった気がした。
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