願い事(第70回 使用お題「近くて遠い」)

 なんとか座流星群で星がぽろぽろ流れる合間に、「何かお願いした?」と彼女が聞いてくる。

 答えるのがうざくて、俺はキスで彼女を黙らせる。

 誤解してご機嫌になる彼女を見ながら、単純だなと思う。

 どうして、いま隣にいるのが彼女なんだろう。

 違う顔の、違う声の、違う髪の、違う匂いが横にいてほしいのに。

 すっ…と目の前の空に、小さな光が走る。

 彼女は慌てて目を閉じて手を組んだが、俺はそっと息を吐く。

 俺の願い事は、流れ星だって叶えられないよな。

 欲しいのは、兄貴の嫁さんだから。

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