HP一のわりには耐久力ある件
バンッ。
巨大なマウンドが爆ぜた。
爆風じみた空気の塊、いや壁にぶつかり、後方へ押され、跳ね飛ばされ、目に見えない重たくて硬質な圧迫を全身に受け、呼吸もできずキンと甲高いなにかが耳をつんざいたあとはなにも聞こえず、とにかくわけのわからないままただ一方的に吹っ飛ばされた。
秒で理解の範疇、メーターがぶっ壊れる勢いで針の振り切れた現象にもかかわらず、なにか一種、スローモーションでも見るように、俺の目に、高々と舞い上がるビンオーとその他大勢――ソアラにぶっ刺され斬りつけられてのびてた奴ら含む――の姿が映った。
いや、このときの俺は完全に思考停止状態におちいってて認識などできていなかったんだが。あとから思い起こして、そういえば、と気づいた。
ごくわずかだったはずにもかかわらず、やけに滞空時間が長く感じられた俺は、刹那の低空飛行の旅を、これまたとんでもない衝撃とともに終え、路上をバウンドする。
ダンッ……ダンッ、ダン、ダンダンダン……。数度、サッカーボールよろしく跳ねたあと、ごろごろごろとさらにむやみやたらに転がったのちようやく、止まった。
ボロ雑巾のような状態で仰向けとなった俺の視野いっぱいにやじ馬の足が並ぶ。どうやらちょうど人垣のきわで停止したらしい。
洋画とか香港映画だったらここで「……ハイ」って気まずそうにあいさつをするんだろうけど、ズタボロでとてもそんな元気はなかった。頭に浮かんだのはただ、野郎ばっか、長スカートばっかでパンツ見えねえなとか、そんなことぐらいだった。
そもそも、そんな間もなく、もう次の「波」が来るんだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます