いろんなぐへへをしてお嫁に行けない体にするなんてうらやまけしからん
ようやく息が少し戻り、じろじろと見下ろされるのもうっとうしくなってきて起き上がろうとしたときだった。
「やめてぇー!」
甲高い声。女の悲鳴が通りに響きわたった。
体を起こし、なにごとかと声のした方向を見やる。
十メートルぐらい先、道ばたに六、七人の男が集まっているのが目に入った。男たちが取り囲み、壁ぎわに追いつめているのは女――というよりは少女。不穏な雰囲気、そこらの町娘と荒くれ者といった風貌のとりあわせから、どう見てもお友達の関係じゃあなさそうだ。
「誰かぁー、助けてぇー!」
どこかへ連れ去ろうと乱暴に腕をつかむ荒くれ系のかたがたに、女の子は懸命にあらがい声をはる。が、集まりはじめているやじ馬も行き交う人間も、誰ひとりとして関わろうとする様子はない。遠巻きで眉をひそめ、あるいは通りすぎていくだけだ。ひでえ。
そりゃたしかに、そろいもそろっていかにもなお顔をしていらっしゃって、人語より拳とかで会話するほうがお得意そうだし、この手の連中あるあるで、ひとりになったら寂しくて死んじゃうのかデフォで徒党を組んでおられるしで、アンタッチャブルなのはわかるけど。
でも、あんなか弱い女の子が、このあと人気のない場所へ拉致られて、あんなことやこんなことやそんなことをぐへへされてお嫁に行けない体になってしまうことを考えるとうらやま、もといかわいそうだと思わないのか。
にらみつけられてすごすご離れてく戦士系パーティー、おまえらが腰に下げている剣やたずさえてる槍は飾りもんか。股間のと同じでイミテーションか。いや、知らんけどっ。
よく冷たいだなんだと揶揄される東京だって、ケンカとかで人がボコボコにされてたらスマホで通報ぐらいはするぞ。なのにこの異世界の連中ときたら、町人AもBも
「嫌ぁー、誰かぁー!」
俺は義憤にかられて――
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