俺の知ってる異世界系主人公「暗黒竜?午後のお茶の時間に遅れちゃうから悪いけど」ザシュッ! 俺「ひいぃ大鼠(Lv2)があぁ!」だだだだ ――なんだこの待遇の差は

 義憤にかられて――くるりと百八十度まわれ右をした。うん、帰ろう。

 いやだって普通に勝てるわけないし。俺レベル一、あちらさん六とか八。俺ひとり、あっち六から八人。俺、全パラメーター一、連中、最低でも六とか八。TASツールでも使わないかぎり百パー、いや、二、三百パー死ぬ。ムリ。


「やめてえぇー、あぁーん!」


 神の野郎がさ、俺にチート能力を与えとけばさ、


『えっ、まさか今の、本気の攻撃だったりします? 僕は、全力で・・・かかってきてください、と言ったんですよ?』『野郎!』『ナメやがって!』『あーあー、動きにむだが多すぎ。エネルギーのむだづかいもほどがある』『くそうっ、このガキ、ちょこまかとすばしっこい!』『いいですか、剣ってのはね、こういうふうに――振るうんです』ザシュッ!『ギッ……ギャアアアアーッ、う、腕があーっ!』『速い!』『み、見えなかった……剣さばきがまったく……』『腕があーっ、腕があーっ!』『やれやれ、まーたつまらないものを斬っちゃいましたよ』


 みたくいい感じのウザキャラを演じられて、さくっとひとひねりできたのに。


「痛ぁいっ、嫌ぁー!」


 セオリーどおり、バカみたいに定番の、アホみたいにテンプレの最強能力を授けとけば、あんなの普通にザコキャラで、夢詰め込めそうなほど頭空っぽに俺TUEEEEして瞬殺、今ごろ女の子にキャーキャー言われてるのに。


「きゃあーっ、誰かーっ、誰かあぁー!」


 あーあ、異世界転生のお約束を――


「そこのお兄さーん!」

「あっ、待ちやがれ!」


 クソ神がちゃんと守らないから――


「お兄さん、助けてっ!」


 女の子が毒牙に――えっ?


「おいてめえっ」


 ええっ?


 そそくさと宿屋に戻ろうとする俺の前にまわり込む女の子。

 振り向けば立ちはだかる怖いお兄さんがた(というかおっさんぐらい)。

 危険を報せる【星屑のささやきネックレス】――いや見りゃわかるしっ。


 えええっ!? なにこの状況。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る