ずっとデネブのターン! ドロー! 禁止カード「無限シリアスな回想録」 場にシリアスな回想を無限に展開する 永久に相手にターンを渡さない

「前日でした。なんの前触れもなしに神様を名乗るおじいさんっぽい声が聞こえてきたのは。

 そのときの私は、迷い猫を探すクエストを受けてリオのあちこちをまわっていました。

 神様に、私は勇者の使徒で、魔王討伐の供をするんだとか言われていろいろ困惑しましたよ。突然のことだし、いきなりなに言ってるんだろうとか、今、猫探すのに忙しいからまたあとにしてほしいとか、今日じゅうにリオを出ろって言われたって、あさって、前に同じクエストをいっしょに受けて仲よくなった子とランチの約束してるから無理だしとか。


 もうしつこいんで無視して放置しようと思ったんですけど、明日、モンスターの大群が街に押し寄せ、リオは壊滅する、なんて真剣な声色で言われたらちょっと怖くなるじゃないですか? 

 なんだか胸騒ぎみたいなのもあったので、一応、従っておくことにしました。

 そのころ、どうもいろいろなことがずっとおかしかったので、なにも起こるわけはないとは思いつつ、念のために。


 そして翌日早朝ですよ。

 神様の言ったとおり、無数のモンスターが街に侵入。王都は一日とたたず見るも無残な姿に変わりはてました。人も建物もあらゆるものが灰燼かいじんに帰すというのか。


 リオにいたほとんどすべての人が街の外へ逃げられず、モンスターの餌食になったとみられますが、ごくわずかに生還者がいました。

 その人たちによると、見たことのない数とそのなかに混じる見たことのない姿かたちのモンスター、その群れが、街の四方八方から押し寄せたそうです。

 王国軍は少ない兵力で獅子奮迅に応戦するも、魔物との差は歴然。不落の都はやすやすと魔物の侵攻を許し、城下の街は阿鼻叫喚の地獄と化しました。


 破壊と殺戮の限りがつくされ、人間の骸が見えず、血の匂いが漂わず、火の手のあがっていない、そんな場所は皆無という、およそ言葉で語れる範疇ではない凄惨な光景で、王都は塗りつぶされたそうです。そのなかには仲よくなったあの子もおそらく。

 いっしょにリオから連れ出せていれば……。たらればを言ってもしかたないのはわかっていますが」

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