俺は、ことにおよびはじめた。白のパンツを(ここから先は子供は厳禁だゾ♡)

 客室は廊下の狭さに比べいくぶん広かった。それを埋めつくすように、二段ベッドが六つほど置かれてある。いくつか埋まっていて、そこここで野郎のいびきが聞こえた。

 あー……そういうシステムね。把握。

 むふふなイベントはないな、これ。


 デネブは奥の窓際のベッドに向かった。


「私は上側で寝ます。勇者様は下側をお使いください」


 かわいらしい靴を脱ぎそろえてデネブははしごを登った。チャンス。俺はあの短くてふりふりのコスプレスカートを覗こうと構えた。


「勇者様?」


 ゴミを見るような視線が俺に降り注いだ。

 俺は漫画みたいに頭の後ろで手を組み口笛を吹こうとした。が、音は出なかった。

 シャッ、とカーテンが閉められた。ああ、そういうの完備なんだ。

 見えないな、着替え。


 こっちの世界で初めてのまともな寝床だ。とくれば、やっぱり。

 初日に助けてくれたパンツお姉さんのパンチラを反芻しつつ、俺はことにおよびはじめた。

 が、すぐに上の段からトゲのある声が降ってくる。


「勇者様、ベッドが小刻みにゆれているのですが、その理由を簡潔におっしゃっていただけますか」


 ぎくりと硬直し、俺はいびきをかくふりをした。自分でもびっくりするほどへただった。

 あきれてものも言えない、そんな言葉に替えた深いため息が聞こえた。

 明日の朝、起きてデネブがいなくなってたらどうしよう。

 こんな情けない泣きごとをこぼしてる奴が本当に勇者なのか。

 俺は何度もステータスを確認した。

 いくど見ても【クラス:勇者】の文字は変わらなかった。

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