女の子と食事後に宿屋で同じ部屋、同じベッドといえばもう朝チュンとゆうべはお楽しみでしたねは不可避! ここから先は子供はダ・メ・よ♡

 晩飯を終えた俺たちは酒場を出た。

 表は、酒に酔った連中がふらふらしている以外、人の姿はなかった。店も民家も戸締まりをしている。もとの世界、現代の日本と違ってこっちの夜は早い。酒場を離れると辺りは静まりかえる。闇に沈んだ街の上の星がうるさいくらいだった。


 安くていい宿だとデネブに案内されて、少し歩いた場所にある宿屋に入った。椅子が二つだけ置かれている、殺風景で狭いロビーだった。

 デネブがフロントのハゲに、ふたりぶんの宿泊を告げている。

 俺は急にどきどきしてきた。

 RPGでパーティーと泊まるのはごく当然のことだが、現代社会に置き換えれば、ホテルにふたりで泊まるってシチュエーションだよな、これ。

 デネブは、二階の一号室です、と折りたたまれたシーツを俺に渡し、カウンター脇の階段を登りだした。俺は宿代を出し忘れたことに気づいて声をかけたが、彼女は、大丈夫ですから、と言った。

 ロビー同様に狭い階段、廊下を進む。

 さっきデネブは、フロントで一室しか取ってなかったっぽい。ど、同室……。いやいや、ベッドはさすがに別々、だよな? もしひとつだけだったりしたら、もう発生するイベントは必然的にそれしかないわけで……。


『さあ、生まれたままの姿を見せてごらん』

『嫌ですわ、勇者様。デネブ恥ずかしい』

『君のきれいな肌を月明かりの下にさらしたまえ』

『新月なので月は出ていませんわ』

『ええい、そんなこしゃくな口は俺がふさいでやる』

『いやん、初めての唇を勇者様に奪われちゃった~』

『はっはっは、別のものも奪っちゃうぞおー』

『あら嫌だ、そんな剛剣、とても入らないわ』

『サキュバスの巣食う洞窟に天誅だ。食らえ、エターナルエクスプロージョンっ!!』

『あはぁ~ん』

 …………

 朝。チュンチュン。

『ゆうべはお楽しみでしたね』


「あの、勇者様」

 眠いので早く部屋に行きませんか、とデネブはめずらしく、ブタを見るような冷ややかな目で言った。

 気のせいか、ちょっと吐き捨てるような口調だった。

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