はちみつの景色。
まる
第1話
またいつか、あの日を思い出す。
新しい季節が来て、私は高校3年生を迎えた。
別にこれといってなにかあるわけでもないし、そんなに変わり映えのない時間が過ぎる。
だからといって、それを嫌だとか、そんなことを思っているわけでもないけど、たまに人生こんな感じで終わるのかなあ、と17歳なりに悟ってしまう。
「果乃、おはよう〜!」
「ああ、夏子おはよ」
「昨日気づいた?新しいクラス、花山くんいるよね」
「花山くん…」
「まさか、果乃、知らないの?!」
「さすがに知ってるよ!」
知ってるに決まってる。あの花山 千景といえば、この学校で一番の有名人じゃん。背が高くて、顔立ちも整っててすごくモテる。らしい。
別に興味がなくたって、みんな一度は耳にしたことのある名前だ。
「ほ〜、果乃が知ってるとなるとだいぶ有名人!」
「いや、興味とかはないよ!みんな話してるから知ってるだけ」
「とにかくカッコいいもんね、でも誰とも付き合わないって話も聞いたことあるし」
夏子のミーハーな話は聞き流しつつ、教室まで歩いていた。
「おーい、席つけー席替えするぞー」
担任は3年連続で鈴木先生。40歳くらいかな?すごく頼もしくてみんなから人気がある。私も鈴木先生が担任でよかったとホッとしていた。
そうしてる間に席替えくじの順番は回ってきて、くじをひいて自分の席に戻る。
「移動開始」
やった、窓側の一番後ろ。
ガタガタと机と椅子を移動させて、自分の席に落ち着く。4階からグラウンドを見渡すことができる窓側。中でも一番後ろは最高だ。
隣の席は、佐藤くん。たしか、サッカー部の。
前は…
「あ」
花山くんだった。
夏子からは羨ましがられたが、これと言って会話したわけでもない。
けど、
スッと綺麗な首筋。背筋も良くて、後ろから見たってかっこよさは伝わってきた。髪の毛も猫っ毛なのかな?少しあててるパーマが時々風でなびくのを私は密かに楽しんでいた。
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