第7話

改めてミラーを見ると、バンは相変わらずまるで僕の車と連結されているかのような距離を保ったまま、走り続けている。


――どうしよう……。


あれこれと想いを巡らせていると、バンが反対車線に入り、とんでもないスピードで僕の車を抜くと、急ハンドルで前に割り込んできた。


そしてあろうことか急ブレーキをかけたのだ。


――うわっ!


とっさにブレーキを踏むと、なんとか追突は避けることが出来た。


バンは少し先まで進むと、そこで停止した。


――まっ、まさか降りて来るんじゃあ……。


降りて来た。


バンから男が一人。


バリカンのみで散髪したかのような髪。


肌に密着した黒いタンクトップ。


使い古された作業用のズボン。


長身で筋肉質の身体といい、荒くれの労働者にしか見えない男だった。


年齢は四十を少し超えたくらいだろうか。


そいつがなんと、僕のほうにむかって歩いて来るではないか。


――わわわっ、こっちに来るぞ、あいつ。


僕の全身に鳥肌がたった。


すると男と目が合った。


――!

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