第5話

――こういうの、苦手なんだが……。


そう思っているとバンが反対車線に入り、あっと言う間に私の車を抜いたかと思うと、そのままの勢いで私の車の前に入ってきた。


そしてあろうことか、急のブレーキ。


――うわっ!


声に出さずに叫ぶと、反射的にブレーキを踏みこんだ。


私の車はバンにぶつかることなく止まった。


――うわあ、とんでもないやつにでくわしたぞ。


私が少し先で停まったバンを見ていると、そこから人が降りて来た。


短く黒い髪。


黒のタンクトップ。


よれよれの作業ズボン。


まるでプロレスラーのような肉体。


総合すると、超体育会系の男だ。


男はこちらに向かってゆっくりと歩いてきた。


――いかん!


私は慌てて携帯を手に取り、警察に通報しようとした。


そのとき私は男の目を見てしまったのだ。


――うわわわわっ!


やばい。


あの男の目はとてつもなくやばい。

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