第4話
相手の怒りに満ちた目。
狂犬を連想させる目。
血走り、目自体が吼えているような目。
そんな目はもう見飽きていたのだ。
しかし男の目はそんなものとはまるで異質なもの。
千人万人分の殺意を二つの眼球に凝縮し、それを一気に全開放したような目だったのだ。
――ひいっ!
あたいの身体が勝手に動いた。
思考の結果ではなくて本能のみの動きだ。
ギアをバックに入れ、アクセルを思いっきり踏んだのだ。
タイヤが鳴り、車は吹っ飛ぶように後退した。
ガン。
後方に強い衝撃を受けた。
当然のことながら、あたいの車は後続車両に突っこんだ。
――つっつ……。
しばらく垂れていた頭を上げ、ぼうとした意識の中前を見ると、黒いバンも男もその場にはいなかった。
太田の場合。
私が片道一車線の県道を走っていると、後方に黒いバンが見えた。
――おいおい、近いぞ。
そのバンはいつぶつかっても不思議ではない車間距離で走っていた。
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