第2話

「アイツ、何してやがる」


少女にマッチを売らせている男は、路地裏に入って行った少女が出てこないことに苛立っていた。


「オイッ!」


路地裏で横たわる少女の腹を、いつものように蹴り上げる。


「畜生、使いモンにならねぇな」


男が立ち去ろうとした時、背後から声がした。


「私に譲ってくれないか?」


逆光で顔は見えないが、身なりの良い紳士だった。


「コイツは俺のメシの種だ。半端な額じゃ渡せねぇ」


男はハッパをかけた。すると紳士は男の上着のポケットに札束をねじ込んだ。


「立ち去れ」


男は紳士の脇をすり抜けるように立ち去った。去り際に盗み見た紳士の顔は、目深に被ったハットに遮られ、ハッキリとは見えなかったが見覚えがあった。

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