第7話 修行 竹の子堀をやった

「さあ、今日は竹の子堀だ。今から、竹ヤブ、いくぞ!」

 そう声を張り上げるのはあの侍、伴十郎である。三バカは抗議の声を挙げる。

「ちょっと待ってよ。何でまた竹の子堀なんだよ! 竹の子掘るのは結構きついんだよ」

 伴十郎はクワみたいな竹の子を掘るための道具を手に持つとすたこらと歩いた。

「おーら、お前らも来いよ。俺の竹の子料理も作って食わせてやるからよ」

「まー、いいか」

「返事ははいじゃ。もう一回!」

「おー」

 伴十郎はふっと笑うとまた歩いた。

 三バカは伴十郎に作ってもらった大きなおにぎりをほおばりながらついていった。

 

 山道を登っていると木々の合間から太陽の光がこぼれ落ちてきらきらときらめいて地面を明るく照らしていた。

「きれいだなー」

 そういうのは鼻水太。鼻水太は結構こういう日常に感動したりしている忙しいやつである。

「そうだなあ」

 朱ノ助と昌之助は食べられる山の木の実を見つけてはぱくぱくと食べている。

 

 カー カー カー

 

 ホー ホー ホー

 

 時々山のどこかで動物の鳴き声がする。

「あーどこかで動物が鳴いてるよ」


 しばらく耳を澄ませていると歌も聞こえてきた。

 

 そーりゃんせ そーりゃんせ

 狐のお宿はこちらです。

 一晩3文でいかがですか。

 決して化かしたりはいたしませぬ

 おいしい山菜料理に海の幸

 きれいな娘っ子の唄踊り

 熱い風呂でさっぱり汗をながせや気分は爽快

 ほてった体を夜風にさらしゃ気分はお大尽

 さあさ、おいでなさいな 狐のお宿

 一度はおいで 狐のお宿

 

 そーりゃんせ そーりゃんせ

 そーりゃんせ そーりゃんせ

 

 目の前で狐が二匹踊っている。くるりくるりと舞っている。扇をひらひら、ときたま着物をはだけさせ、

 

 くるりくるりと舞っている。

 目の前がぐるぐると回っている。そのまま、こてん、と座り込んでしまった。

 

「……おい、おい! しっかりしろ。朱ノ助!」

 朱ノ助は目を開ける。気がつくと陽だまりで寝ていた。

「いったいどうしたの? こんなところで」

「おいおいおい、そりゃこっちのせりふだよ」

 伴十郎が心配そうにこちらを見ている。

「あれ? 狐は?」

「へっ?」

「ここで狐が二匹舞ってなかった?」

 朱ノ助のその言葉を聞いてか、他の三人は心配そうにこちらを見ている。

「大丈夫か?」

 その言葉を口にするのは伴十郎。

 今度は朱ノ助がぽかんとした。一瞬思考停止をしてしまった。

 お互いに「へっ?」「へっ?」といいあう。

 しばらくその様子を眺めていた伴十郎は近くの草むらに腰かけると、

「ここでしばらく昼寝をしてから竹の子堀に向う」

 ごろりと伴十郎は横になる。

「ちょっと疲れてんだよ。休もうぜ」

 その言葉で一人一人また横になり、しばらくして周囲にいびきが響き渡るようになった。

 

「そろそろ起きろよ。いい加減竹の子掘らなきゃいかん」

 三バカはひとつ大きなあくびをすると体を起こした。

「さあ、そろそろ行くぞ」


 こうしてまた山道を歩いていく。

 そして着いた。

 竹の子が生えている竹やぶに。

 

「さあ、一仕事やっちまうぞ」

 伴十郎は背中に背負っているザルを降ろす。そしてクワを持つ。

 そして竹の子を見つけると、周りを掘っていく。

 三バカも見様見真似で竹の子の周りの土を掘り返していく。

 結構きつい。汗が流れ落ちる。着物は汗で、びしょびしょ、である。腰もきつくなってくる。

 

 それでも竹の子の根の部分まで掘った。

「じゃあここでクワの歯の部分を竹の子にあて思い切り振り切り竹の子を根と切り離す」

 伴十郎は手本を見せる。伴十郎はクワの歯の部分を竹の子の根の部分に思い切り当て竹の子を切り離した。

「おおっ」

 三人は声をそろえる。

「じゃあやってみ」

 それからそれぞれに分けて竹の子を掘る。

 

 二時間ほど掘ったところだろうか。疲れが限界に達して来た。

(もう動けない)

 その場で寝転がる。竹の、さらさら、としたざわめきが心地いい音をかもしだしている。腰にぶらさげているひょうたんの水をがぶりと飲み干す。

 

 結構竹の子堀も大変であったということが分かっただけでもいい。

 

 

 庄屋様のところに竹の子を持っていくとこれはみなさんで食べなさいと4個竹の子を渡された。

 丁重にお礼を言って帰る。

 

 その竹の子を持って家に帰ると利吉のじじいは大喜びをして竹の子を神棚に供えたのはまたの話。

 ともかく竹の子の煮物はめちゃくちゃおいしかったとさ。

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