第4話 引きこもり
朝、目が覚めたが、体がいうことを聞かなかった。めちゃくちゃだるかった。それにすごく眠かった。眠くて、眠くてしかたなかった。利吉じいさんが起こしに来る。
「早くおきろ。ごくつぶし。飯出来たぞ。早く食べんさい」
腹はそんなに空いていなかった。
「いらん。いらん。それよりもうちょっと眠りたい」
そのまま起きて便所に行くと小便をした。体が重い。心もいろいろとだるい。そしてまた布団の中へと戻った。もういろいろ頑張るの、疲れた。このままずっと寝ていたい。
「勝手にしろ」
しばらくすると利吉は畑仕事へと出て行った。朱ノ助はそのまま夜まで何も食べずに眠った。途中のどが乾いて水を飲んだがそれ以外は布団の中でうずくまっていた。もう何もしたくない。動きたくない。呼吸するのも疲れた。
なんか生きているのにも疲れたな
そんな思いすら頭をよぎる。何をバカなことをと最初は思ったがいったん思うとその思いが脳裏にべったりとこびりつく。
いつの間にか布団の中に子狐の精霊黄太がもぐりこんでいる。
「ぼくも疲れちゃったよ。なんかいろいろ」
「なあ、黄太、一緒にどこか遠くに行こうか」
黄太は、大きいあくびを一つすると、
「今はまだだよ。それよりも布団ってこんなに暖かいんだ」
黄太を見つめる。黄太はぼくをふいと見ると、
「疲れているんだよ。休みな。僕も休むよ」
それだけ言うと、黄太は布団の中で、すーすー、と軽いいびきを掻き始めた。
朱ノ助は眠り続けた。何日も何日も・・・・・・。そうして一ヶ月が過ぎた。食事ものどが通らない。動けない。あれほど鍛えに鍛えた体はどんどんやせ細っていった。
そうして朱ノ助は寝たきりになった。利吉のじっちゃんが、布団を何回もはがそうとした。しかし、何回怒鳴っても何回懇願しても、朱ノ助は話している間に眠ってしまう。
「朱ノ助、頼むからもう起きてくれ! 働かなくてもいいから、そりゃ寺子屋に行かせる金は作れんが・・・・・・。外のことはなんでもするから。はよう、元気になってくれ。頼む・・・・・・」
朱ノ助は体を起こそうとした。その時、急に吐き気をもよおした。思わず吐いてしまう。胃液しか出ない。そしてその胃液にまみれたまま朱ノ助は倒れ込んで寝てしまった。そのような事が続くたびにどんどん体が衰弱していった。
鼻水太と昌之助も何回も見舞いに来たが何もしゃべらずずっと目を閉じていた。
「なあ、兄貴、早く元気になってくれよ」
「そうだよ。兄貴がいないと寂しくて仕方ないんだよ」
今はその言葉を聞いているだけでも疲れる。
「頼む・・・・・・。もう帰ってくれ・・・・・・。疲れた・・・・・・」
朱ノ助は壁の方を向いて目を閉じる。
「兄貴・・・・・・」
そのまま二人は帰っていった。
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