第3話
手から剣が離れ、つんのめってぐらりと体が傾ぐ。
ハルカは咄嗟に両手を前に出したが、その手が地面につくことはなかった。
「大丈夫か?」
黒髪の竜騎士、ヨウコクはその子供の腹に腕を回して倒れないように支えている。
そうこうする内に体勢を立て直した子供から手を離すと、片膝をついてそうたずねた。
視線が合うようにしゃがんでくれた青年に子供は笑顔で頷く。
ハルカが何事もないということを確認すると、彼はにっと笑ってまた立ち上がった。
練習用の木剣の刃部分を自分の肩に乗せながら頬を掻く。
「今日はこれくらいにしとくか。
昨日よりはマシになったな、偉いぞ」
犬か何かを撫でるように両手で子供の髪を掻き回す様に撫でた。
それにきゃあと高い声を上げながら子供は楽しそうに笑う。
端から見ればその様子は仲睦まじい兄弟のようであった。
「さー、腹減っただろ。
丁度昼飯時だし何か作ってやろう」
一頻り撫でて、ヨウコクはまたしゃがみこんだ。
その動作を見て少しハルカは首を傾げたが、すぐにぱっと表情を明るくして彼の首に抱きついた。
青年は片手で軽々と子供を抱き上げ、余った片手で転がっているハルカの木剣も拾う。
手に収まっている二本の木剣を定位置に戻し、ヨウコクは子供を連れて自室へと戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます