第3話

手から剣が離れ、つんのめってぐらりと体が傾ぐ。

ハルカは咄嗟に両手を前に出したが、その手が地面につくことはなかった。


「大丈夫か?」


黒髪の竜騎士、ヨウコクはその子供の腹に腕を回して倒れないように支えている。

そうこうする内に体勢を立て直した子供から手を離すと、片膝をついてそうたずねた。

視線が合うようにしゃがんでくれた青年に子供は笑顔で頷く。

ハルカが何事もないということを確認すると、彼はにっと笑ってまた立ち上がった。

練習用の木剣の刃部分を自分の肩に乗せながら頬を掻く。


「今日はこれくらいにしとくか。

昨日よりはマシになったな、偉いぞ」


犬か何かを撫でるように両手で子供の髪を掻き回す様に撫でた。

それにきゃあと高い声を上げながら子供は楽しそうに笑う。

端から見ればその様子は仲睦まじい兄弟のようであった。


「さー、腹減っただろ。

丁度昼飯時だし何か作ってやろう」


一頻り撫でて、ヨウコクはまたしゃがみこんだ。

その動作を見て少しハルカは首を傾げたが、すぐにぱっと表情を明るくして彼の首に抱きついた。

青年は片手で軽々と子供を抱き上げ、余った片手で転がっているハルカの木剣も拾う。

手に収まっている二本の木剣を定位置に戻し、ヨウコクは子供を連れて自室へと戻っていった。

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