第65話「初夢プロポーズ」
オレ達はどこかの高層ビルの豪華なレストランで食事をしていた。美里さんは何やら綺麗なドレスを着ていてオレはスーツを着ている。
「美里、君の瞳に乾杯」
「修三君ったら」
照れながら美里さんとグラスを軽くあてるとカン! と良い音がする。そのまま2人で運ばれてくる豪華なディナーを楽しんだ。肉からご飯から魚から茄子などの野菜からもかなりの高級な料理だ。頃合いかと腕時計を確かめると丁度作戦開始の1分前だった。
「美里、今夜の僕は魔法使いさ、今からあのビルに魔法をかけるよ」
そう言って時計の針が真上を指すとともにパチン! と指をならす。
するとたちまち隣のビルについていた明かりが一部消え「I LOVE YOU」という文字が浮かび上がった。
「凄いよ修三君! 」
彼女が感嘆の声をあげる。
「どうしてこんなすごいことができるの? 」
「言ったろう、今夜の僕は魔法使い。実はあれらのビルには友達がいてね、交互にビルの明かりをつけたり消したりしてくれているんだ」
「そんな、そんなに友達が沢山いるなんて凄すぎるよ修三君!」
「なんのまだまだ! 」
オレはさらに指をならした。すると今度は左右両方のビルの明かりも消え「坂田美里」という文字が浮かび上がる。
みると美里さんは感動で涙を流していた。
あとはこれを渡すだけだ。
オレはポケットに手を入れて小箱を握る。その時だった。
「緊急速報です! 隕石が地球へと接近しています! お客様は……」
優雅なBGMが止んで館内に放送が鳴り響く。途端に静かだった店内は他のお客さん達の声で騒がしくなった。
「どうしよう、修三君」
美里さんが慌ててオレに尋ねる。
「大丈夫だよ美里、ちょっと待っていてくれ」
オレはそう言うと気合を入れて足の裏が開いて噴射口が出現する。
「とうっ! 」
オレは窓から外に出て足の裏から出るジェット噴射により空を飛び鷹を飛び越し富士山を越えひたすら隕石を目指す。やがてオレと隕石が勢いよく衝突する。
「たかが石ころ1つ、オレの美里への愛で押し出してやる! 」
オレがこの地球の最後の希望だ、命燃やすぜ!
オレが1人で隕石を地球から押し出そうとした時だった。遥か彼方から飛んでくる人の姿が見える、赤木だ!
「修三、お前だけに良い恰好はさせないぜ! 」
そう言うと赤木はオレの隣に来て隕石を押し出そうとする。
「赤木……」
「いくぞ! 」
赤木が腕に力を込めたのをみてオレも腕にさらに力を込める。
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 」」
2人でジェット噴射をマックスにして一気に地球から大気圏を突破して宇宙へ辿り着く。
「宇宙キターーーーーーーーーー! 」
感極まって叫ぶと一気に岩を投げる。
「言ってる場合か、最後の仕上げだ」
そう言った赤木の手がスライドして噴射口が現れる。オレもそれに倣って手の噴射口を出した。噴射口から一気に炎が出てその力で
「「飛んでけええええええええええええええええええええええ」」
2人でフワフワと漂っている隕石にキックすると隕石は勢いよくどこかへ飛んで行った。
「終わったな修三」
赤木が声をかける。オレは頷いた。
「また今度、どこかへ飯食いに行こうぜ! 」
「ああ! 」
オレ達は挨拶を交わすとそれぞれの場所へと戻って行った。
「お待たせ」
美里さんのいるレストランへと着地する。彼女以外は誰もいない。逃げ出さずにずっとここで待っていてくれたようだ。
「修三君! 無事でよかったよ! 」
美里さんが抱き着いてくる。目に涙があふれていたのでハンカチで拭う。
「当り前さ、隕石くらいじゃオレの美里への愛は止められない。美里、結婚してくれないか」
そう言うと膝をつけ腕を伸ばし手に握っている小箱を開く。中には指輪が入っていた。それをみた美里さんは口を手で覆う。
「こんな私で良ければ喜んで」
そう言って目を瞑った美里さんの唇が近づいてきて……
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ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!
うるさい音により目覚める。
「正月くらいゆっくり寝かせて……え? 」
目覚まし時計を止めると辺りをキョロキョロと見回す。どこからどうみてもオレの部屋でレストランでもなければ美里さんもいない。掌と足の裏をみるも噴射口が現れることはなさそうだった。
「もしかして…………夢? 」
ようやく自分が夢を見ていたことを把握する。
「なんだよそれ~」
オレはがっくりと布団に膝をついた。隕石を押し返してプロポーズだなんて最高のシチュエーションだろうに。しかし初夢は一富士二鷹三ナスビが出ると縁起が良いと聞く。思い返せば全部夢の中に出ていた気がする。今年は良い年なのだろうか?
0時ジャストに美里さんにも赤木にも新年の挨拶は済ませ年賀状はポスト投函済みだ。
「今度東京に行ったときに赤木と遊ぼうかな」
そう決めて朝の支度をしに台所へと向かった。
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