再起動プログラム
機械音
黒髪の青年が意識を取り戻すと、すぐさま中性的な合成音声によるアナウンスが流れる。
『ピンポーン。282年3カ月と12日間のコールドスリープお疲れ様でした。サカイ シュウヘイ様、これより再起動プログラムを行います――』
遠くで鳴るような"音"が鼓膜を叩く。全身に電流が走ったようにジワジワと痛みが広がっていき、その痛みがやがて温かな流れとなって体の中を巡り始めた。
『血液の循環を確認中……正常。拍動正常。呼吸安定。シークエンス1の完了を認めます』
喉から無理やり引き剥がされていくように体の中を空間が通り抜け、それが少し苦いような香りのする気体だと理解すると、続いて自身の周囲の壁がグネグネと動き始める。
『マッサージによる筋肉のリハビリテーションを開始。同時進行で脳細胞へのアプローチを行います。個人データから最適トラックを選択……"ハッピーバースデートゥーユー"。再生開始』
チープな音声によるバースデーソング。ここまでくればもう思い出していた。
『おかえりなさい、サカイ シュウヘイ様。現在時刻は西暦2302年11月5日午後15時24分。ユートピアでの快適な生活をお楽しみください』
300年ぶりに目を開く。坂井修平はコールドスリープより生還した。
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