第4話 依存2

アイドルって言っても、まだほとんど名前は知られていなくて、翔太がよく言うんだけど「こんなに近くでファンと話せるのは今だけだから」と。それは売れていけば、コメントも読めなくなるという意味でね。


配信もしなくなっちゃうかもしれないし、私は、そのことを考えると、今が大事で貴重な時間とわかっていても、先のことを考えると寂しいんですよね。


だから売れる前に、離れた方がいいのかなぁという思いもあったんですよね。


私が離れたくなったもう一つの理由は、ルームの雰囲気が嫌だったというのもあります。翔太の熱狂的なファンの子がいて、ほかの3人の配信にも必ずいます。それはいいのですが、私が話しかけても無視です。ひたすら翔太に話しかけるのみなんですね。


私は、そういうルームに居ると苦しくなるんです。そりゃあ、本人とだけ話したいのはわかりますけどね、挨拶しても無視とか意味がわからないです。拓也のルームでも、何処でも、そんな人が多いのです。


それに、その人、智子(仮名)は、翔太の舞台に3回も行ってますし、ライブにも行く人なんですね。翔太のことだけではなくて、私は直接応援に行けないので、なんか辛いんですよ。そういう話になるとね。


でもまぁ、これからは智子のことはこちらも無視して、翔太と話せればいいかなぁと思っています。翔太は、ファンに平等ですからね。寧ろ、あんなに応援している智子より、私とふざけあってる時間が長いので、一度「智子のものになれ」「なってやれよ、あんなに応援してるんだからさあ」って言ったこともありますよ。


自惚れかもしれないけど、翔太は私と話すのが楽しいんですね。この前もね、久しぶりの配信、30分だけと言ってやってたのに、もう少し延長しようかな、って言い出して、夕方だったのでゆっくり話せないから、またくるねって言ったんだけど。


その時の会話ね。


「俺の知ってるさっちゃんかな」

「久しぶりの配信なの?キツネ以来?」

「キツネ?」

「4人で配信してた時翔太がキツネの指だけ出してたやつ」

「えっ、観てたの?コメントしてくれれば良かったのに」

「窓から覗いただけよ」


土曜日はメンバー全員で配信してるのです。Showroomは入室する前に、プロフィール写真が出てるところをタップすると、小さい窓みたいなところから中を覗けるんですよね。声も聞こえます。丁度、翔太が、左から指だけ出してキツネの指を作ってたんですよ。


「ここから見た人はなんだと思うだろうね」とか言いながら。まさに、そこから私は見ていたんですけどね(笑)


「なんだかんだ言いながら観てくれてるんだね」

「なんだかんだって誰が言ったの」

「ま、いいや」


なんで泣いたのか、全部は聞けなかったけど、事務所の人とか心配してたとか言ってました。


「私のせいで?」

「いや、なんかさ、いつも来てくれてた人が来なくなるって寂しいじゃん」

「俺ってリーダーやってるし、なんかしっかりしてそうに見えるかもしれないけど、そうじゃないんだよね。翔太、翔太って言われたいんだよ」

「知ってるよ。またくるからね」


そんな会話をしていた時も、智子はいたんですけどね、すっかり2人だけの世界になってましたね(笑)


翔太はね、私がマナブくんに送ったリプライまで見るんですよね。前に配信の時に開口一番「さっちゃんなんでマナブにあんなこと言うの?」


内容は、翔太がさっちゃんはマナブが入り口だからっていつも言うんだよ。どうせ売れたら私のことなんて忘れるくせにガタガタ言わなくてもね?みたいなことでした。


「どうせ見るでしょ?マナブくんに送ったやつも」

「見るよ!めっちゃ気になるから」


その時に、私は作家アカウントでツイートしてるのが残ってるけど!


彼氏かwww www

あんたは私の彼氏かwww



続く


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る