三
鋭い破裂音が私を浅い眠りから現実に引き戻した。
ここでは夜──特に深夜になると、こういう銃声が、時々、聞こえる。
怪異の街は昼と夜で様子が変わる。
といっても、建物がおどろおどろしいものに変わるわけでもなく、隔離反対派の百鬼夜行デモ行進なんかでもなくて、むしろ、もっともっと怖い、狩りの時間が始まる。
この街の狩人は二種類に分けられる。
一つは他の怪異とか人間とかを喰らうことが存在する理由の怪異。こっちは別にいい。多くの人間が忘れてしまった自然の摂理だから。
でも、もう一つはあまり気分のいいものじゃない。
それは私が化物だから何だろう。
この場所を全ての問題の元凶として隔離した国は、基本的にここへ手出しをしてこない。せいぜいが大企業に支部作らせたり、最低限度の物資の運び入れくらいだ。
だったら、ほとんど治外法権のここでは、罪が罪にならないんじゃないか。
そう考えた一部の人間が結界を超えてこちら側に忍び込むまでは、そう、時間の掛かることじゃなかった。あくまで私たちを出られないようにしているだけの結界だから、向こう側からはどんなものだって入れてしまう。
初めに忍び込んだ人間が始めたのは、薬だったり武器だったりの密売だったのだけど、次第に私たちを狩る人間が現れ始めた。理由は大方向こうでのストレス発散のためで、稀に時代錯誤の怪異狩りをしていた輩もいるけど、今やそんなのお金にならないんだから、結局はあまり変わらないと思う。
ここでなにが死のうと、国にとっては関係ないことなんだ。
だから、もう一つの狩りは許されない。許したくはない。
だって、それは一部の人間による、完全なる娯楽だ。自分たちとは違うからどうしたっていいなんて、都合が良すぎるじゃないか。
とはいえ、私にはどうしようもない。人間だからってむやみやたらに傷つけるのは、一部の人間と同じことになるし、何よりそんな力も無い。
だから私にはどうしようもないことだ。正義を思うだけで、後は自警団に任せよう。
私は周囲を確認してから、再びまどろみに戻った。
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