特権階級―Privilege Minority
不老不死の実現は、本当にあっという間だった。世界中で
ここでひとつめの問題が起きる。
そう、価格さ。
我が日本はまだマシな方だったが、それでも月額250万円って、目玉が飛び出るほどの値がついた。抗老化治療は継続的な処置が欠かせねぇ。技術も成熟しきっていねぇもんだから、恩恵を受けられる消費者の数が限られてたんだ。そんな時に起きるのが商品のプレミア化。たとえ原価がドリップコーヒー1杯分であっても、希少価値さえあれば自動車なみの値がつくのさ。かくして高額な費用を支払い続けることができ、かつ診療所に紹介してもらえるコネを持つ、限られた会員のみがサービスを享受する差別社会が出来上がった。
当然のように、世界各所で不満が爆発したね。
そりゃそうだ。その当時、貧富の差は拡大するばかりで、富裕層はただでさえ激しい嫉妬の目を向けられていた。それでも死は平等に訪れる、そいつが人々の心の支えになっていた。少なくとも無意識のレベルではそう思われていたはずだ。死と老いだけが真に平等だったんだ。それがどうだ?富裕層はとうとう、不老不死を手に入れようってんだ。まさに特権階級だ。当時の地球を埋め尽くした感情はやはり嫉妬だろう。庶民の歯軋りが世界中に響き渡った。三日三晩、下手クソの弾くヴァイオリンみたいな呻きが地球の大気を震わせ、赤ん坊の泣き声がコーラスを担当した。
しかしその問題も次第に解決されていく。新規技術なんてのは後発の奴らに
あとはまぁ、些末なニュースがいくつかあったくらいだ。イタリアではマフィアが薬を買い占め、中国では薬を飲んだ人間が爆発した。よくあることさ、そうだろ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます