第67回:テーマ『泳ぐ』
タイトル:君が魚ならよかった
水族館に、行かなくてもよかった。
私には新宿の地下のアクアショップで充分だった。
ひとりで大丈夫だった。ひとりでも、お金を出したら連れて帰れたし。これは水族館じゃできないし。
私は君を連れ帰る。
君の泳ぎが大好きだと思った。どんな競泳選手よりも力強く、どんなシンクロナイズよりも華麗だったから。
電車に一緒に揺れ、家に着き、ここが君の新しい家だよと小さく呟いて、用意していた水槽に移す。
「また買ってきたの? 魚なんてすぐ死んじゃうのに」
姉が言う。
「私はデートで水族館行かないし」
私はまだ夢と幻想に泳いでいたい。
触れた水槽のガラス越しに、綺麗にヒレを翻す熱帯魚を見る。
恋人と別れたばかりの夏が来た。
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