第54回:テーマ『水』

タイトル:すべて矛盾でできている


憂鬱な六月がやってくる、と、君が言う。

何がそう思わせるのかと問うとぽつりぽつりと単語が落ちてくる。

梅雨、雨、プール開き、暑さ、ゲリラ豪雨。

女子高生にはだめなのだ、と君が言う。そして机に突っ伏す。教室の黄ばんだ白のカーテンが風で跳ねる。

私は君の前の席で横に座り、君のつむじを見ていた。

「雨ならプールは休みだけど、晴れたら授業がプールになるの、その矛盾が素晴らしいくらいに嫌なの」

「そもそも六月は水無月、だしね」

「そうなの、矛盾じゃない?」


「あ、あそこに陸上部」

「どこっ? ○○君は?!」

君が顔を上げる。

陸上部の王子は練習を終え、水道から豪快に水を浴びている。

「……いいね」

君が言った矛盾を私は聞き逃さなかった。

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