第55回:テーマ『あう』

タイトル:せかいにはきみとわたしとタピオカ


七夕の願い事を、今年は書かなかった。

梅雨が明けない7月上旬、今ごろ同級生はテスト終わりに街まで出てタピオカを飲んでいる。私は自習室でひとり、教科書の英文をたどたどしく追いかける。

なんてったって、明日の英語のテストがヤバいのだ。


コンコン、


まだ冷房の解禁されていない、ぬわりとした自習室の窓を外から誰かが叩いた。

私は気付いてガラリと開く。自転車を止めた君が少し息を弾ませている。


「タピオカ、また新しいお店できてたから」


窓越しに手渡されるじわりと汗をかいたタピオカと君。

私の世界が自習室の四角より少し広くなる。

タピオカ持ち込み禁止令が学校から言い渡されるのはまだ先の話である。

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