マインとミル

ユキと呼ばれた人型守護者は冷気をこれでもかと言わんばかりに発していた。彼女の周りにいたら体液さえも凍りかねないと思うほどだ。


「ブリザード………これどういう?」


「わからん、おいユキ!!マインとな!キューブを使った国家間の連絡網の作成や作業の効率化の考えができたんや!ワイらの氷の壁作戦と合わせて」


「ミルも………同じように提案してきた」


ユキは冷たく言い放つ。その言葉でブリザードは凍ったように固まった。その目は冷たく、小柄な少女のような外観からは想像もできない覇気を持っている。


「以前、雪溶け隊は追い返した。だからマインとミルだけ特別とはいかない。だから知りたいのマインとミルが………どんな氷鉱夫なのか。強いの?作業が早いの?………私はどんな人に託せばいいの?目的はわかった。超がつくほど賛成よ」


ポツリとつぶやいた彼女の目は悲しげだ。確かにキューブで発展の手助けをする言葉できるがそれがプラスになるが判断しかねているらしい。


 どんな氷鉱夫か。それはどう言えばいいのか自身では全くわからなかった。俺が悩み、何も言えずにいるとミルが口を開いた。


「マインは………人のために動ける人です。作業はそこそこ早いです。戦闘は直線的な印象です。壁を走れます。………人と協力して事に当れます。その結果が隣の国の氷鉱夫団の再生を手助けしたこともあります。ブリザードドライとも仲良くなりました………ブリザードドライの鎧になるんですって………」


ミルは一つ一つ思い出を辿るように言葉を紡ぐ。少しむず痒い。でもミルが俺を見てくれていたの認識して少しうれしいような気もした。思わず顔を下にうつむける。対して顔を上げミルはまだ続けた。


「まっすぐだけどちゃんと物事は考えられます。突拍子もないことも稀にあるけど………私は………そんなマインが………」


ユキは瞼を少し閉じてからミルを優しく見つめる。そしてミルに近づき手を握った。いつのまにか彼女は冷気を発するのを止めていた。ミルは驚いて体を少し震わせた。


「ありがとうミル………じゃあ………マインにも聞きたいの」


ユキは再び冷気を放つ。冷気が肌に刺さるような痛みを起こす。だが俺は体を縮こまらせず、胸を張った。ミルのターンから俺のターンだ。


「ミルはさ……俺の弱さを初めて指摘してくれたんだ。俺は助けられるだけの立場ではない、みんなを引っ張り、引っ張られ対等に協力すべきだと教えてくれた。自分の強さを認めない弱さに気づかせてくれた」


ユキは黙って聞いている。ブリザードは頷きながら。ミルは先の俺と同じように恥ずかしい様子だ。俺は続けた。ミルが俺にくれたもの、ミルのおかげで為せたこと。ミルという氷鉱夫を説明したい。


「ミルは戦闘は俺なんかより早いし、一撃が強いよ。採掘も早い。俺と同じ意思を持ってここまで来てくれたのが嬉しいし誇らしい。………あとクールに見えるけどすごい優しいんだぜ?人に寄り添える。そんなミルが俺は好きだ」


俺はかなり恥ずかしいことを言った気がするが、俺は胸を張ってユキと目を合わせた。ユキは冷気をピタリと発するのをやめ、後ろを向いた。その顔は少し笑っているのを俺は見逃さなかった。


「ふふふ………あなたたち素敵………どんな氷鉱夫かって聞いたら………互いのこと褒め出すのだもの。自己紹介じゃなくて他紹介ね」


ユキは滑るように俺とミルの横を通りブリザードのもとまで歩いた。ブリザードは不思議そうな顔をする。


「ねぇブリザード………私………この人たちにキューブを預けたい」


「そうやな。ワイもや」


ユキは振り返りブリザードの足に腰掛けた。ブリザードは少し驚いたようだがすぐに彼女の背もたれを手で作ってやっている。ユキがこのような行動をするのは珍しいようだ。


「人型守護者になれるキューブは便利よ。氷の中を泳ぐように移動できる。身体能力が上がるわ。国家間の連絡も作業も効率的になる」


「それで………人々は困ることが少なくできるかな」


「わからないわ。でも私は信じる。マインとミルなら………人のことを考え………互いに協力していける2人ならキューブで為せるって………」


ユキは笑った。そして俺とミルに2つずつ透明な、氷のようなキューブを手渡した。ひんやりと冷たいそれは質量の割に重く感じられた。


「ありがとう………ユキ!」


「ありがとうございます」


俺たちはキューブをギュッと握りしめて感謝した。そして俺はユキの手を取った。人型守護者状態で相当冷たいがそんなことは関係なかった。


「ユキも………ブリザードもみんなも俺たちが連絡網や作業用の効率化……何かいい方向にできたら………見に来てくれないかな」




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