ユキ

 マインがブリザードとアイスブレイクを図っているとき、ミルのアイスポイント内の散策はある1カ所でピタリと止まった。ミルの目の前にはプレバブの小屋、吹雪くたびにガタガタと壁が揺れていて今にも倒れそうだ。ミルはその小屋のドアを優しくノックしてみた。


「どうぞ」


「………お邪魔します」


ミルが中に入るとそこには椅子が二つ、そして木箱の上にカップが二つ置いてある。まるで来客を予想していたかのようだ。椅子の一つに座る白いドレスを纏い、白銀の毛を持つ少女はにこりと笑う。


「ようこそアイスポイントへ。私はユキ。久しぶりのお客さん。雪溶け隊から………10年以上経ってるわね」


「私は氷鉱夫ミル。雪溶け隊を追い返したのはあなたですか?」


「そうよ。私と守護者で………」


ミルは切り出した。彼女をアイスポイントの主人と思ったのだ。氷の壁を効率よく削り、人々のために何かできることはないかを探しに来たことを話す。すると反対にユキも氷をつくるに至る経緯を説明した。


「………みんなのために氷の壁を………でも氷の壁がなかったらミルたちは成長できなかったとも言えないかしら?」


「そうです。しかし困っている人もたくさん見てきました。氷の壁をどかすまでいかなくても………私の考えとしては人型守護者に変身するキューブ………それが有れば国家間の連絡網の開通や作業の効率化が図れると思うのです」


白いヘアーカラーと服装の少女はゆらりと立ち上がる。そしてミルの顔を覗き込んだ。体を触りツルハシに触れた。


「相当頑張ってきたのね。私たちアイスポイントの住民は氷を貼ったけど………最適解だとは思ってない。提案があるのなら受け付けたいわ………何せここにくる氷鉱夫は信頼できるもの。協力して、考え、努力せずには来れないわ」


「でしたら………!」


「でもね、雪溶け隊は追い返してしまったの。いい子たちだったけれど。一部のいい子だと思ったのよ。文明全体が頭を冷やし切れてないと感じたの。しかしミルとお友達は歓迎したわ」


ユキが体勢を起こすと胸元からキューブを取り出した。ミルはそれを見たことがある。紛れもなく人型守護者になるためのキューブだ。ミルは咄嗟に距離を取る。


「私アイスポイント主人ユキ。ミルの提案には賛成、キューブを使って国家間の連絡網の作成並びに作業の効率化により困ることを減らせる。私たちの頭を冷やす作戦と合わせるのはいいと思う」


 コツン、ユキはキューブも胸に当て、人型守護者へと変身する。白い鱗が四肢を多い、目元はオパール色のアイシャドーのような模様が浮き出た。それとともにプレバブの中は吹雪き、とてもたってはいられない状況だ。ミルは小屋の中から急いで避難した。


「ユキさん…賛成ではないのですか!」


「賛成。でもキューブは守護者由来、簡単に渡すこともできない。しかも雪溶け隊は追い返したから公平に行きたいの」


ミルと吹雪を体から放つユキに会いたいしているところに、ちょうどブリザードの声が届く。


「おーい!ユキ!マインがいい案を持ってきてくれたで!」

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