最速

ブリザードキューブは冷凍光線をあたりに撒き散らす。即席のスケートリンクができるかのようにあたりは氷に侵されていく。


「なるほど………流氷がやってこれたのは君のおかげかマックス」


「そんなことはないさ………ポーンやテータ…いい仲間のおかげさ………」


 マックスはコンマ1秒かと思われるほどの速さでツドラルに迫り、爪を突き立てた。ツルハシで防ぐも予想外の重さだ。

「ぐっ」


「流石の反応の速さだ」


「………どういうカラクリだ?人が守護者のパワーを」


「流氷としていろいろ旅してるといいものが手に入るのだ」


マックスはツドラルから離れる際蹴りを入れた。ツルハシは横なぎをかちあわせ相殺するも予想外の速さにツドラルに冷や汗が流れる。


「おいツドラルどうする?お前一人でやるか?」



「あぁ………グレンはブリザードキューブの方を頼んだ………残っている氷鉱夫は………」


 周りにいた氷鉱夫たちはこの戦いに入っていける気がしなかった。思わず下がってしまう体をなんとか押しとどめていた。


「中心部に後退し………守りを固めろ」


そこからはしばらく膠着が続いた。氷鉱夫たちが後退し、ツドラルたちのみが残った。


「………私にタイマンを挑んだのは君が初めてだ」


 マックスはツドラルの視界に出たり入ったりしながら近づいてきた。その速さは少しでも気を抜けば完全に見失うほどだ。


 集中していたツドラルだがほんの僅か。マックスを見失う。完璧にと思われる氷鉱夫の僅かなひび割れを逃さずマックスはツドラルに向かって蹴りを放つ。


「………これも防ぐか」


 蹴りをツルハシの柄で防ぐツドラルだが防げるという確証はなく、先読みの結果ぎ功を奏していた。ツドラルはマックスの足から離れツルハシを振るう。


 風を切るような攻撃。しかしいくら打ってもマックスに当たることはなかった。


「当たらん………読まれているのか?」


一般人には不可視ほどのツドラルの振りを見切るだけでなく避けるのは並大抵の技ではない。それをやってのけるマックスにツドラルは一層警戒を強めた。


攻撃のパターンを読んだマックス。反撃に出る。しっぽ、拳、ひっかき、蹴り。攻撃の隙がない。ツドラルはツルハシを縦横無尽に動かして防ぐもその足はだんだんと後退し始めた。


「どうした氷鉱夫!!ついてこれないか⁈」


 マックスは青い顔に微笑みを浮かべさらに加速する。一つ一つの攻撃が銃弾のような速さ、ツルハシのような鋭さ持っている。


ツドラルの防御が瓦解するのも時間の問題。マックスもそう感じた。


「………これで……止めだ!!」


予想外。マックスは手から光線のようなものを放つ。今までの戦闘で一度も見せていない攻撃。それをラッシュの途中で放ったのだ。避けられるはずがなかった。


何かを焦がすような音と匂い。それが両雄の周りに充満した。


「………」


「………見えなかったぞ?」


 初見の技を隠していたのはツドラル同じだった。ここに来てマックスに対して初めて鉱技を発動し、光線とかち合わせたのだ。


「よもや私の攻撃に追いついてくる速さとはな…」


「こちらのセリフだ。この瞬間まで最速の氷鉱夫を自負していたのだがな」


ツドラルの鉱技、振る速度の強化。シンプル、だからこそ攻防ともに優れている。


 少し焦げの匂いのついたツルハシから匂いをとるようにツドラルはツルハシを振りマックスと距離を取る。


 マックスも深追いせず、さらなる速さを見せた相手をじっと見つめる。


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