ツララ塔にて

 このままでは氷鉱夫が各個撃破されるのを待つのみだ。マジックアイスの能力を知っているとはいえタイマンは無理だ。そもそもマジックアイスの能力が多彩すぎて一人では尚更だ。  


「ワープに、触手、デバフ攻撃…デパートかよ!どうすれば…みんなの位置もわかんないのに………」


するとふと思いついた。ここはツララ塔前だ。ツララ塔は国随一の高さを誇り、かけ登ればみんなの位置がわかる。そしてうまくいけば合流したい氷鉱夫とも合流できる。


 ライトアップされているツララ塔に向かって俺はかけた。ポーチから水筒を出し、靴にかける。


「氷鉱夫体術!壁歩き!」


そしてツルハシで鉱技を発動し、推進力を得る。完璧ではない壁歩きを補うのだ。ツララ塔は結構丈夫だ、グレンさんが言っていた。


 俺は極力真下を見ないようにツララ塔の側面を駆け上る。いまだかつてないほどの壁歩きの発動時間。体力も集中も持つかはわからない。冷や汗が流れ、目に入るが気にせずてっぺんを目指した。。


「先端!」


 ここからは賭けだ。ライトアップされたツララ塔はおそらく夜戦の中皆が注目している。そこから叫べば反応があるはずだ。突然だし、計画性もない、彼女の反応があることを信じるのみだ。


先端につかまり、いきを吸う。肺の空気を全て出す気持ちで叫んだ。


「ミルー!!!!ここだぁぁ!!」


声が響く。皆撹乱されている時にさらに混乱するかもしれない。国の端まで声が届くわけがない。ミルがどこにいるかもわからない。



 ないないづくめのこの行動がどんな結果になるかはわからない。冷風が肌を撫で、心細いが心を強く持った。


「頼む…」


ぐっと目を瞑った。すると何か足音のような音が聞こえてきた。しかも二つ、しかし人が出せるような足音ではない。


俺は嫌な予感がして真下を見た。マジックアイスが駆け上ってきていた。


「わぁぁ!そうか…こんだけ目立てば…」


よくよく考えれば撹乱している時に合流を目立つやり方でしようとすればこうなる。しかし後悔してももう遅かった。どんどんマジックアイスは近づいてくる。


「ここで迎撃かよ!」


地上100メートルほど、一気撃ちする羽目になった。少しでもバランスを取れなくなればこちらの負けだ。


 マジックアイスは腕を伸ばしこちらを鞭打ちのように殴打してくる。ツルハシでなんとか防ぐも、防御のたびにバランスに危機が訪れる。


 「やばい…腕が…」


 片手で、踏ん張れない状況でのガードは体力を削られる。反撃をしようにもできない。


 するとマジックアイスはワープし、一気に俺との距離を詰めてくる。いま自分を襲うのが爪か牙かわからないほどの距離だ。

「っ………!」

 

 やられた。そう思ったのも束の間、体はまだツララ塔にくっついていた。一方マジックアイスはツララ塔の麓に見える。


 落ちたのではなかった。回避したのだ。近づいてくる他の氷鉱夫を警戒して。その氷鉱夫俺と共にツララ塔の先端につかまりこちらを見つめている。



「あの…でかい声で呼ばないでください…恥ずかしい…」


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