マインズマインドオペレーション

「マイン、指揮権あげます、引っ張るのを味わってみてください」


ミルはニヤリと言った。いきなり指揮権と言われても困惑する。だが、もう決めてしまった。俺は手本となる、引っ張る、もらうばかりではいない、と。


「…わかったよ…」


作戦ってやつを立ててやる。やったことないけど、マインズマインドオペレーションだ。

まずはユウナリのスピードをどうにかしなければならない。ツルハシの振りより早く動けるなんて尋常ではない。


しかし戦いの理論に当てはめれば自ずと答えは見えてくる筈だ。考えろ…!ユウナリは教育するだとか言ってたのは本当らしく、こちらを微笑みながらみつめている。


「よし!3人1組、背中合わせで行くぞ!」


ユウナリは陣形が整うのをみて襲ってきた。ユウナリが俺の視界から消えた。早すぎて見えないのは仕方ない。討伐の理論にのっとって動きを制限もしくは止めることが重要だ。


3人1組で全方位警戒すればユウナリが真上から来るのは当然だった。


「上!ミル!突風だ!」


今のところ氷鉱夫の味方は空中にはいない。周りの被害を気にせず、ミルはツルハシを振るう。竜巻のような暴風が上空を埋め尽くし、ユウナリは風に煽られバランスを取れずにいる。



「いまだ!」


11人の鶴橋が襲いかかった。闇雲にふるったのではなく、一人一人攻撃をして行った。一人目が避けられるのは織り込み済み、連続して打つことにより、避けるコースを限定し、最後に決めるのだ。動きを限定、制限するのは経験上最適なはずだ。


ユウナリは10回も連続で避け続ける。だが最後のおれが決めれば問題はない。ツルハシを振りかぶった。


「いい…すごい…わ」



ユウナリにツルハシが当たると水を打った感触がした。俺は確かに攻撃をした。しかしツルハシはすり抜け、俺はバランスを崩す。


「な、何だ⁈」



「…私は守護者の中でも…水を使う…水を撃ち出し…水で絡め取り…体を…一部…水にもできるの」



ここまでしてダメなのか?流石におれそうだ。

だがユウナリの言葉は意外なものだった。



「でも…10代の…ルーキーあたりの子たち…に…液体化…使うと…思ってなかったわ…合格…教育は…おしまい…よ」



ユウナリは満足そうに笑うと再び氷の中に入って行こうとした。だが俺には戦い終わったら聞きたいことがあった。


「ま、待て!君は一体…」


「守護者…と言った…でしょ?」



「守護者が俺たちのために何で教育してくれるんだ?」


「…氷の中…泳いで…いろんなところ…あたしは…みてるの…遅かれ…早かれ…隣の…国と…氷壁が掘られ…繋がる…隣の国…軍事面…すごいのよ…今までじゃあ…勝てないの…だから」



隣の国、ありえない話ではない。50年前氷壁が社会を覆い、国家は分断された。各々の自治体が氷を掘り進めれば開通するのは当然だ。

「勝てない…?何で戦うのですか?」

それもそうだ、隣国と繋がったとしてどうして初っ端から険悪になるとわかるのだろうか。

ミルがそう聞くとユウナリは今はまだ内緒と言って氷の中へ帰って行った。氷の中を泳ぎ、どこかへと行ってしまう。



「なんだよあいつ…」


「さぁ…でも教育はうまく行ったようですね」


確かにそうだ。自分がまた一つ成長した気がする。インプットだけじゃダメなんだ、アウトプットして、貢献していくことが大切なのだ。




「なぁミル…今度また大規模プロジェクトみたいなのがあってさ…一緒になれたら…副リーダーやるよ」


「それはノルダと決めてください…まぁ少なくとも多数決になったら10票は入るでしょう…」


ミルが指さした方向から共闘した同じルーキーたちが駆け寄ってきた。


「やるな、マイン?だっけか」

「いい作戦だったわ!」



彼らはいろんな称賛と感謝を述べてくれた。彼らが喜んでくれるなら俺はまた引っ張る側、与える側になってみてもいい。自分も成長した気がする。





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