引っ張るルーキー
「そ、そんなこと…!俺は先輩たちに追いつけてないし」
「その先輩たちというのがグレンさんやツドラルさん、それにジャス地区第3の氷鉱夫のことを言っているので有れば私の言ったことは尚更です」
確かにミルのいうこともわかる。職場のジャス地区第3はNo.2の採掘氷場だから超優秀な人ばかりだ。それと現段階、同年代の氷鉱夫を比べられないのは承知している。
「でも、俺は学ばせてもらう立場だ!」
「そうです、学ぶことはできます。でもあなたはジャス地区第3の氷鉱夫であり、トップクラスの氷鉱夫であるグレンさんに師事しているんです!他を引っ張る必要があるでしょう!!」
ミルは声を荒げた。でも俺の意見では、引っ張るということに俺の実力は届いていないとしか思えない。
「…はぁ…まぁ今日はいいです、明日から作業します…」
ミルは冷静さを取り戻し、宿舎へと戻っていった。話の最中副リーダーを請け負ったノルダは固まってた。
「マイン…とりあえず今日は部屋行こうか」
「そうだな…昂った…ごめん」
部屋に入ってみるとベッドが二つ、水道が一つ、空調もあるし暮らすのには申し分ない。俺は荷物を置くと一つとベッドに身を投げ出した。冷静になってみると色々考えが浮かぶ。
「引っ張る…か…」
元の職場ではトップクラスのグレンさんがいるし、頼れるリーダーカストルフさんがいる。それについていくのに精一杯だ。たとえ俺が副リーダーになったとしてみんなは実力も不足している俺についてくるのか?
「マイン、僕は先寝るよ」
「ああ、また明日」
翌朝ミルが戸を叩く音で目が覚めた。横を見るとノルダはまだ布団にこもっている。ノルダをゆすってみるが、あと5分としか言わない。
「おーい!ノルダ…こんなに朝弱いタイプだったのか…」
そういえばノルダの職場は始まるのが昼からだと言ってたので納得はいく。ノルダの布団を剥がそうとするとドアが開く音がした。
「遅いです、2人とも!」
「わっ?!何で入れんの?」
「ここだけの話予算の都合上キーは同じです」
空調をつけたら資源と予算が足りなくなったらしい。でも空調を優先したのはナイスプレーだ。
「ん…おはよ…」
ノルダが目を擦って起きたのでさっさと準備を済ませて部屋から出た。
宿舎から出ると他の氷鉱夫はもう集まっていた。各々ツルハシを構えて氷壁に向かい合う。氷の奥に風力発電所が見えている。1ヶ月、その期間であそこにたどり着くのだ。
ミルがマイクを使って呼びかけた。
「風力発電所プロジェクト第一日目を始める前に副リーダーを紹介します」
「どうも、副リーダーを務めることになったコンプス地区第二のノルダです!よろしくお願いします!」
「コンプス地区ってあのツドラルさんの…」
「採掘トップの…」
ノルダは照れながら挨拶をし、ミルの後ろに戻っていった。俺が副リーダーとしてあそこで挨拶してたらどうなったんだろう。
ジャス地区第3のマイン、と言ったら。No.2の採掘氷場、グレンさんの後輩、国選氷鉱夫カストルフさんの部下、箔は付くだろう。だがその箔が剥がれたとき俺は彼らの目にどう写るのか、それが心配だった。
それ故に俺は言った。実力不足で俺はまだ学んでいる、と。ノルダは付き合いは短いが、何となくわかる、朝早く起きろという要求以外は優しいから断れないのかもしれない。
ミルが大体説明を終えると作業が始まる。
「頑張っていきましょう、作業スタート!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます