副リーダー
グレイシャス草原、自宅からかなり離れている場所で作業が行われるということで朝はいつもより早く起きることになった。
めざまし時計欲しいな、と思いながら目を擦り、着替えをする。外はまだ暗く、冷たい空気が窓を通してつたわつてくる。だが俺の心はやる気で満ち満ちている。
「大規模プロジェクト…成長のチャンスだ…!ジャス地区の先輩たちも応援してくれたし、何かをつかんで帰る!」
玄関にかけてあるツルハシ、フォアリベラルを手にとり、アパートの階段を駆け下りた。薄暗い街中を疾走していくと冷風が眠気を吹き飛ばした。
しばらく走ると緑の髪の人物が角から現れた。同じく走ってる。
「おはよう、マイン!」
「ノルダか!大規模プロジェクトに推薦されたんだろ?」
「うん!頑張ろうね!」
グレイシャス草原に着く頃には息がきれてしまつた。白い息を吐きながらグレイシャス草原にたった宿舎を見上げた。
簡素な作りだが、室外機がついている。ツララ塔はルーキーのために部屋に空調を入れてくれたらしい。
「いいね、俺らに投資してくれてんだな」
「倍にして返そう!」
風力発電所が使えるようになれば電力も前より使えるはずだ。
やがて他の氷鉱夫、といっても俺とノルダの同い年しか集められていないが、集まってきた。
話によると議会でルーキーオンリーで作業すると決まったらしい。
「そういやミルはいるのか?」
「いると思うよ、リーダーだもん、プロジェクトの」
あたりの人混みを見渡してもミルは見当たらない。ふとマイクで大きくされた声があたりに響いた。
「風力発電所発掘プロジェクトに参加する氷鉱夫は宿舎の前に集まってください!」
ミルの声だ。言われたとおり宿舎の前まで来てみるとNo.1採掘氷場のルーキーであるミルは何やらメガホンとマイクが合体したもので呼びかけている。
「全員集まりましたか!私はリーダーを務めるミルと申します!」
知ってるよ、そんな顔が大体だ。なぜならミルは一度殆どの氷鉱夫を風で飛ばしたことがある。後から喧嘩を打ったわけではないと氷鉱夫が理解はできたがあの衝撃は忘れられない。
「氷の中の風力発電所に対して列をなし、絨毯のように全員で掘り進めていきます!守護者はみつけ次第報告してください!策を講じてから半数で戦います」
「半数?」
つい声を出してしまった。だが同じ疑問は他の氷鉱夫も持ってるようだ。
「そうです、そこのツンツン頭の人の言うとおり、半数です!なぜならここにいる100人近くが一斉にやると連携が取れません」
ツンツン頭と同じ疑問を持つ氷鉱夫は皆につ得したみたいだ。というか俺はミルのイメージではツンツン頭ってイメージしかないのだろうか。
「その他は宿舎の各部屋に要項があるのでそれを読んでください。以上!」
氷鉱夫はミルから鍵をもらうと2人1組で、部屋に入っていく。俺はノルダと同じになることになった。
「マイン、ノルダ…久しぶりです」
「あぁ、そうだな。勉強会以来だからな」
ミルは何かいいたそうだ。俯きがちにこちらをじっと見つめている。
「2人に言っておきたいのですが…副リーダーをどっちかやってくれませんか?」
副リーダー、リーダーの次にみんなをまとめる、しかし俺にはそんなものを受けられる実力がないように感じた。ジャス地区では助けられっぱなしだからだ。今回も学びにきたつもりなので引っ張るのは少し違う気がした。
「俺はまだ相応しくないよ、ノルダの方が相応しい」
それを聞いたノルダは驚いたような顔だ。
「ま、マインは実力ある方だと思うよ?僕より」
「いや、俺はまだグレンさんやジャス地区の先輩みたいに強くないし、賢くない…引っ張られる方なんだ…」
ミルもこちらを困惑したように見ている。そんなに変なことを言っただろうか。ミルからしたら俺なんて…という感じだ。ノルダ、ミルは俺のことを評価してくれているというのだろうか。
「まぁ…ノルダが副リーダーでお願いします」
「う、うん…」
2人ともどうしたのだろうか。何かいいたげだ。
「どうしたんだよ?はっきり言ってくれよ」
これから一緒に作業していくのだ。腹割って話したい。2人が俺を馬鹿にしているのではないのはわかるが、いいたくても言えなさそうなことがあるのは俺としても気になってしまう。
ミルは少し宿舎の方を見てから言った。宿舎なは他の氷鉱夫が部屋に入っていく。
「マイン、調子に乗らせるわけではありませんが…あなたは…」
「?」
「今回は明らかに他の氷鉱夫を引っ張る側です」
その言葉は称賛とも取れるが、ミルの目は称賛するような目ではない。大事なことを伝えるようなときにする目だ。
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