防具を買おう
グレンさんは気前のいいことを言ってショーウィンドーの横を通り、用具店に入って行ってしまった。俺もそれをおう。中に入ると氷鉱夫らしき人がたくさん買い物をしている。氷鉱夫の装備はツルハシや防具だけでない、彼らは閃光弾や、煙幕、スパイクブーツなど様々ならんでいるのを手に取ってはカゴに入れている。
俺が店の内装を見ているとグレンさんがすでに胸当てのコーナを見ていた。
「防具はこっちだぞ!どうするマイン、オーダーメイドか、そのまま買うか?」
もう奢ってくれる気満々らしい。これ以上は申し訳ないから意地でも商品棚から選ぶことにした。
「これかっこいいな」
「あ?対衝撃…通気性…最近のはハイテクだな…」
ただあんまり重いのを選ぶわけにもいかない。俺のツルハシフォアリベラルは応用力重視だからある程度動けるような方がいい。
胸当てや肩当ての棚を歩きながら見ていくと気づかないうちにレディースの方まで来てしまった。どうやらこっから右にしか選択肢はないようだ。
「うーん、やっぱり軽いほうが……あっ、これはどうだ?」
「…なんだそりゃ、胸当てと膝当てがセットになってんのか?」
機動力確保のためには足をやられないことも大切だ。胸当てに膝当てが付属してるならお得でグレンさんの負担も少ない。
デザインもかなり気に入った。フォアリベラルとは対照的にホワイトで体にもフィットする。
討伐の際に氷壁に背中を任せると若干保護色のように使えるかもしれない。
「それでいいのか?」
「ああ!ありがとう、グレンさん!」
支払いの後、店から出て早速胸当てをつけてみた。そこら辺の氷鉱夫も装備つけたまま歩いていることがよくあるので街中で装備でもおかしくはない。
背中に手を伸ばしてベルトをかちゃりとつけると胸当てを少し叩いてみる。次に動いてみる、ズレはない。
「いいなこれ!どんなものも防げそうだ」
「たがらって防御や回避を疎かにしたらダメだぞ」
痛いところをつかれた。まだ避けたりするのは苦手だ。守護者とは打ち合ってしまいがちである。だって相手の動きがわからないから。
だがこの胸当てはぴょんぴょんはねてもなんら問題はなく、機動力も変わらなそうだ、練習すれば回避も問題ないだろう。
「…大規模プロジェクトも俺がチャチャっとやってやるぜ!」
「ちなみに明後日からな」
おいおい待ってくれ。明後日?避ける練習する時間がないじゃないか。
「それまでに回避できるようになるかな」
「大規模プロジェクトはほとんど採掘だろ、守護者も多少だろうが」
確かにそうだ、風力発電所なんて大きなものを取り出すのだから大体の作業は氷を削ることになるだろう。
また、グレンさんによると泊まりがけで1ヶ月ぐらいらしい。その間大規模プロジェクトに従事する。
「そういや、泊まりがけってどこ泊まるの?」
「グレイシャス草原に風力発電所が見つかったからその近くに仮の宿舎作ってくれるつてよ」
他の氷鉱夫と作業するのは緊張するが、少し楽しみでもあった。さらなる成長のための見本がたくさん、ということだからだ。
「じゃあ、今日は体を休めろ、明日もカストルフに言っておいてやるから明後日の準備するんだ」
「わかった、ありがとうグレンさん」
その他細々したことを言ってグレンさんはそのまま帰って行ったが、ふとくるりと向きを変えて戻ってきた。忘れ物か?
「忘れてたぜ」
「な、何が?」
「俺がいないときでも討伐できたな、よくやった」
グレンさんは乱雑に俺の頭を撫でた。街中で恥ずかしい、周りの人も見ている。俺は18だぞ!言ってやりたかった、だが悪い気はしなかった。氷鉱夫になって2年、討伐を始めて2ヶ月、歩き方は間違ってなかったようだ。
「…当たり前だろ、俺も成長してんだ…」
胸に何か熱いものがこみ上げるのを感じた。
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