決着と決定

アイシーアイの砲撃が再開した。そして片方とはいえ俺じゃ防ぎきれない球数が目に入ってくる。


「マイン!下がるよ」


ジーン先輩はツルハシで盾を作りながら俺と一緒に後退する。距離をとるも一次休戦、とはさせてくれないらしい、アイシーアイは地面を蹴って飛び上がり俺とジーン先輩の真後ろに回り込んだ。


「なっ?!なんて脚力…!」


「先輩、行きますか?」


「いや…引きつけるんだ…」


アイシーアイはジリジリと距離を詰めてくる。やがてもう撃たれたら避け切ることのできない距離にまで達した。引きつけると言ってもこれが限界だろう。


いまにもアイシーアイの弾が射出口が光ってうたれようとしている。


「今ですマリーナ姐さん!!」


ジーン先輩が叫ぶとアイシーアイの残った射出口が音を立ててへこみ、塞がれた。しかし何かが当たったようなのは見えなかった。


「[遠隔衝フルウイング]よ!今のうちに下がりな!マイン、ジーン」


「す、すげえ!姐さんの鉱技ですか?」


後退しながらマリーナ姐さんのところまで行った。


「そうよ、私の鉱技はリーチの向上、当てるの難しいのよね。引きつけといてくれてありがとう」


ふとツルハシの刃先をリーチが伸びている時に当てるのはとんでもないテクニックだと思ったが今はそんなことを言っている場合ではなかった。砲身が塞がれたアイシーアイは地を蹴り近づいてくる。砲台に目が行っていたが、足には鱗のようなものがあり、食らったら大変だ。


ブンという音を立てアイシーアイの蹴りが横薙ぎに襲ってくる。なんとか避けるが反撃の隙がない。


避け続けバランスを崩したところに相手のけりがとんでくる。


「やべっ!ボルトスパ……うわっ!!」


ミスった。完全に腕に相手の蹴りが入ってしまった。なんとか動くがビリビリとしている。


今のは避けるべきだった。無理に打ち合おうとしてはいけないはずなのに!



「平気かいマイン!」


「ジーン先輩、まだやれます!」


「厄介ね…ガランとグラン!壁はれる?」


遠くで待機していた盾役のガランとグランが返事をする。2人の鉱技は壁を作ることができるが、それをいまどう使うのだろうか。


「カストルフ!指揮権もらうわよ!!」


マリーナ姐さんは俺とジーン先輩に作戦を伝えると単身アイシーアイに突っ込んでいった。


鉱技を使わないでも姐さんはしっかりとアイシーアイのラッシュをふせいでいる。そして一瞬。わずか1秒。

姐さんと相手の距離がたった1メートル空いた瞬間、ガランとグランはそこに向かってツルハシを投げ、鉱技を発動した。



「「鉱壁!」」


アイシーアイの前に鶴橋が巨大化し壁が築かれた。マリーナ姐さんはそれを思い切り押した。大きな音を立てて倒れた壁はアイシーアイがジャンプして避ける選択に絞らせる。


「浮いたわ!マイン!行きなさい!」


俺はそのあいだずっとボルトスパイクの電撃を貯めていた。応用力のツルハシでもチャージする時間さえ有ればパワーは出る。


俺はアイシーアイに向かってイナズマを帯びたツルハシを打ち込んだ。


「うらぁぁっ!!」


アイシーアイも負けじと最後の蹴りをツルハシに向かって放つ。いつもこんな感じだ。最後は押し合いになる。だが今回はため時間があった。


「俺たちの勝ちだァァッッッ!」


アイシーアイは電撃をくらい、その場に気絶したようだ。


ただ俺も電撃を貯めていたので体が痺れてしまった。着地がままならず、バランスを崩したが、ジーン先輩が手をつかんでくれた。


「おつかれマイン」


「あ、ありがとうございます!…はぁ…」


やったぜグレンさん!心でそう呟いた。







「はぁっくしょん!」

ツララ塔に会議に来ているグレンが雄叫びのようなくしゃみをすると会議が静まり返ってしまった。


「平気かね?」


「あっ、すみません議長」


議長と呼ばれた男は引き続き話し合いを進めた。


「では今回氷の中に見つかった風力発電所…これを掘り出すのは難しい。ということで各採掘氷場のメンバーから推薦して150人ですることになった。ここでもう決めてしまいたい。推薦する氷鉱夫はいるかい?」


議長が促すと髭男が手を上げた。と同時に隣のグレンも手を上げた。


「お?考えは同じかツドラル」


「ふん…まぁな」


2人が推薦したのはそれぞれジャス地区第3マイン、コンプス地区第2ノルダ、共に職場のルーキーだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る