氷上の銃手 アイシーアイ
ジャス地区第3採掘氷場で俺にとっての2回めの討伐が決まった。勉強会から2週間、ツルハシの扱いも良くなった、知識も手に入れた、かなり自信がある。
「今回見つかったのはアイシーアイ…氷の弾丸を飛ばしてくる。弾丸の種類は二種類、直線弾と変化弾だ」
「変化弾?」
アイシーアイについては知っていたが弾のことまでは知らなかった。
「ガードを避けるような機動をするということだ」
「そっ、そんなのどうやって防ぎゃいいんすか…」
「曲がる方向を予測してくれ、それと…」
さらっと言ったぞカストルフさん。どうしろというのか。No.2の採掘氷場というのはこれだから困る。
「あと当日グレンさんはツララ塔の会議に出席するからお休みだ」
さらにピンチを助長するような情報が加わった。グレンさんは前回や初回の戦闘で助けてくれたからいないとなると少し心細い。
「なんの会議だよグレンさん!」
「まだ内緒だぜ、寂しいのか?」
「ち、違うし…」
心細いだけだし、とはいえない。他のメンバーとカストルフさんはそれを見て笑った。
「大丈夫さ、僕たちで事足りる。グレンさんはしっかり会議してきてくださいね」
「まかせろ、カストルフ。マインのこと頼むぜ」
なんか恥ずかしいぞ、保護者と子供みたいじゃないか。カストルフさんが他の説明をすると解散となった。あたりも暗くなってきて、あたりには昼よりひんやりとした空気が立ち込めた。
作業の後片付けをして、ツルハシをバッグに詰めると、氷の中のアイシーアイが目に入った。薄い膜の向こうにいるようだ。アイシーアイは今にも動き出しそうに、こちらを見つめ返すように見えた。
「…明日は負けないぜ!」
翌朝ツララ塔に向かうグレンさとばったり出会った。鼓舞された俺はより一層気を引き締めてシャス地区第3に向かった。しかし道中人混みもあったしざわざわしている街中なのに何故かさみしいかんじがする。
出所のわからない、ということにしておきたい寂しさと自分を奮い立たせる気持ちが混じり合った状態で採掘氷場に足を踏み入れると副リーダーのマリーナ姐さんが氷の前に爆薬を設置していた。
「おはようございます!マリーナ姐さん!!」
「おっ、早いじゃないマイン。グレンさんい
なくて寂しがってるんじゃないかって心配してたわ」
「そ、そんなわけ…!あるかもしれないっす」
つい本音が出てしまった。実際いつも共に行動してたし、年の差なんか関係ないほど親しくさせてもらっていた。
「ふふっ、正直ね!でもあんたがそんなにしょんぼりしてたらグレンさんだって不安でしょ、しっかりしなさい!」
バンと、マリーナ姐さんに叩かれもう一度自分
でも頬を叩く。よし!もうしょんぼりしない、グレンさんにいい戦果を報告してやろう。
カストルフさんや他のメンバーも来て討伐がいよいよ始まる。実際グレンさん以外は実力がわからない。なぜならチュートリアル以外で共闘してないからだ。
「よし!爆薬に着火し、アイシーアイを氷から出すぞ」
カストルフさんが爆薬を起動させ、一目散にこちらに走ってくる。閃光と爆音のあと氷の壁が崩れ去る。
直後氷の塊がこちらに飛んできた。これが氷の弾丸だ。
「…なっ!?…っぶねぇっ!」
間一髪避けた、しかし後ろに逸れた弾はおりか折り返してまた俺に向かってきた。
「初っ端、変化弾かよ!」
ツルハシでギリギリ防ぐもあまりの衝撃にぐらつく。あまり受けられるような代物ではないようだ。
「敵意確認!ジーンとマインで切り込んでくれ」
「了解!」
「はい!」
俺はジーン先輩と共にアイシーアイに突進する。当然アイシーアイは弾で迎撃しようとしてくる。眼前に弾がぱっと見10こ以上、その全てが変化弾だとしたらとても受けきれない。
「マイン、ぴったり後ろについていて!」
「は、はい!」
ジーン先輩は俺の前に出ると強く片足を踏み込んだ。ちょうどその時弾が曲がりジーン先輩目掛けて飛んでくる。
「ジーン先輩!!」
「う…ら…っ!」
ジーン先輩の体が中を舞った。弾に打たれたわけではない。地面と垂直に体を回転させている。着地するとその足で今度は地面と平行に回転する。ジーン先輩が舞うたびに氷の弾が砕けた。
確かこれは鉱技ではない。氷鉱夫の体術の一つだ。
ジーン先輩は弾を落とすと今度は俺にツルハシを向けた。これは俺も訓練したからできる体術だ。その名もツルハシアンカー。
「先輩頼みます!」
「行くよマイン!」
先輩のツルハシに俺のツルハシを引っ掛ける。先輩は俺をハンマー投げのようにアイシーアイに投げつけた。宙を飛んだ俺はツルハシをなんとか振りかぶる。弾のリロード中だろうか、アイシーアイはガードの姿勢をとった。
「まず狙うは…」
空中で狙いを定める。まだ倒さない、というより倒せない。討伐のセオリー通りなら俺のやるべきことは一つ。アイシーアイの肩についている氷の弾の射出場所を塞ぐ。
「行くぜフォアリベラル!」
フォアリベラルの刃が守護者の肩、氷の弾の射出場所を捕らえる。鈍い音がして、当たったことを確認してから俺は着地した。膝がビシッ言ったがまだ動ける。
アイシーアイはやっと異変に気付いたようだ。片方の砲身がツルハシにより打たれたのだ。弾はこれで2分の1だ。
「まずは動きを制限する!やったぜ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます