アイスバーグフライ後編
「氷の壁を爆発させ、アイスバーグフライを外に出す!そこからは先ほどの役割の乗っ取るのだ」
ツドラルはそういうとマッチを同化線にあてた。火種が進んでいき、爆薬に合流した途端、爆音と強い光があたりを覆う。氷が崩れるが、対照的に守護者アイスバーグフライは空中へと飛び出した。
あたりを威嚇するように吠えた声は耳を痛めそうなほどだ。
チュートリアルで習ったことを実践するならまずやることは動きを止めることだ。
「採掘氷場から出ないようにこっちに引きつける!行くぞフォアリベラル!!」
バトルフィールドから出られたら元も子もない、外の工場なんか攻撃されたらたまったもんではない。つまり自分たちに釘付けにさせるのだ。動きを制限する。
「みんな目をふさげっ!フォアリベラル、[フラッシュ]ッ!!!!」
主人に答えてくれたフォアリベラルは眩い閃光を放ち、アイスバーグフライの気を引くことに成功したようだ。
アイスバーグフライは吠えて、翼を広げた。翼から何やらパキパキという音がする。
「これは…ツララ攻撃だ!避けるのだ、マイン!ミル!」
こちらに向かって数え切れないほどの氷の槍が襲いかかってきた。回避しようとするも俺の前にミルが立ちはだかった。
「おい危ねぇ…」
「…吹き飛ばせっっ!!!」
ミルのツルハシが空を切ると頭上に突風が吹いた。空気の壁が出来たかのようにツララの攻撃は止められて、次の瞬間ツララを全て吹き飛ばされた。あたりにツララが落ちていく音が聞こえる。
「や、やるじゃねぇか!」
「次、追撃きますよ」
そうだ、遠距離攻撃の次は追撃を普通はしてくるとチュートリアルで言われたじゃないか。しかし今回はメインアタッカーであるグレンとノルダのレンジまで引き寄せなくてはいけない。
つまり追撃を受け止める必要があるのだ。
アイスバーグフライは水に潜るような姿勢でこちらに向かって滑空してきた。爪がこちらを狙ってるのがわかった。
「…来い!受け止めてやるっ![ボルトスパイク]!!!!!」
グンジョウオオタテガミを気絶させた技だ。一応グレンさんのいったように技名もつけてみたのである。
タイミングを合わせ、腰を入れてツルハシを振るう。ばちばちとなるツルハシとアイスバーグフライの風を切って襲いかかってくる爪が接近する。
「おらぁァァっっっ!」
衝突の瞬間、金属をかち合わせた音が響き渡る。電撃は爪には通らないようで、滑空のスピードをブーストしたアイスバーグフライに押されて自分が壁に近づいているのがわかった。
「ぐぬぬっっっ……!止まれ……!」
壁に打ち付けられるのも時間の問題だ。離れようにも爪で押されてそんな余裕もない。
「助太刀します!」
ミルが再びツルハシを振るうと強力な風がアイスバーグフライをからめ取る。翼に風を受けたアイスバーグフライは自由を失ったようだ。
「あ、危なかった!サンキュー!」
「別に。それよりもうこちらの[距離]ですね」
「任せとけ!いくぞノルダ!!」
グレンがそういうのが聞こえてきてそちらを見ると、地面に打ち付けられたアイスバーグフライにグレンとノルダが突っ込んでゆく。
グレンの炎の熱気がこちらまで伝わってくる。ノルダはツルハシを居合のように構える。
「点火!豪炎衝ッッッ!!」
「リープスラッシュ!!!」
ノルダの斬撃がアイスバーグフライの再飛翔を止めた。直後グレンの攻撃。凄まじい高温と衝撃、閃光であたり一面が覆われた。爆煙で辺りが見えなくなり、グレンとアイスバーグフライが煙の中に消える。
「ぐ、グレンさん!」
「心配するなマイン、グレンなら…」
煙が晴れてゆく。クリアな視界が取り戻されつつある、そんな視界に人影が見えた。グレンが煙の中から出てきた。
「ふぅ…やったぜ…ノルダの攻撃のタイミングも良かったぜ」
「わぁ!ほんとですか!ありがとうございます!」
倒したと、2人が喜んでいるのをみると気が抜けた。ミルもはぁーっと息をついてその場に座り込んだ。手に同化したツルハシにエネルギーを流し込むのだからそれも当然だ。ただ1人、ツドラルが何か考えているように見える。
「ツドラルさん?どうしたんすか?」
「さっきミルが弾いたツララは52本だ」
「は、はぁ…」
あの一瞬で全て数えたらしい。とんでもない視界の広さと動体視力だ。
「普通アイスバーグフライのツララ攻撃は約200本……フン…保険か…アイスバーグフライ…!!」
ツドラルはそういうと俺とミルの前に立ちはだかる。意味がわからずツドラルを見上げると恐ろしい光景が飛び込んでくる。
アイスバーグフライは最初のツララを真下の俺たちに、残りのツララを真上に打ち上げていたらしい。2段階攻撃だ、今となって残りのツララが氷鉱夫を貫かんと襲ってくる。
「グレン!弾くのだ!!」
「は?何が…おおっ?!マジかよ!?下がってろノルダ!」
グレンはノルダを後ろに突き飛ばした。グレンとツドラル2人で残りのツララを防ぐというのか。いくらトップクラスといえど反応できないだろう。…いや最初にツドラルは言ってたじゃないか。
[ツルハシの降る速度の上昇]
「アイスバーグフライの保険…打って見せよう」
ツドラルの手がもう見えなかった。ツルハシを振るう速度が早すぎるのだ。驚いてそれを見つめていると今度は何本ものツルハシがツララに向かって現れたように見える。残像。
「速度最大…[貫射・貫激・過多霰]…」
あまりの早さに何本にも見えるツルハシが的確にツララを打ち落とし、破壊してゆく。一方でグレンは熱気で当たりのツララを溶かしていった。
俺はツドラルの鉱技に目を奪われていた。早く、強く、的確だ。
「最後の一本…!」
全てを打ち落とした2人をミルとノルダも唖然として見つめていた。これがトップクラスだどういうのか。恐怖さえ感じる。
前にカストルフが言っていたが、ツルハシの攻撃は刃の先っぽという点で行うものであり、本来武器として使うのは難しいと。
唖然としている俺にグレンが話しかけてくる。
「どうした?マイン。感動しちまったか?」
「あ、いや…なんつーか」
今日は技術を見にきたのもあったが、ツドラルの技術をどう吸収すれば良いのかわからない。言うなればツドラルの技術は鋼だ。経験を積み、精錬されガッチリと固まった技術は他のものに吸い上げることさえ許さないらしい。鋼にストローを立てても何も吸えないのだ。
「か、かっけぇ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます