6月 部活A

ある6月のジメジメした日のこと。


日直の仕事もやっと終え、特にすることも無く学校内をぶらぶらしていると美術室の前にたどり着いた。中を覗いていると右側の最前列にみーちゃんの姿があった、どうやら今日は他に美術部の人はいないらしい。


「みーちゃん、何描いてるの?」


 ガラガラとドアを開けみーちゃんに話しかける。


「あ、かずくん!今ねコンクールに出す作品の仕上げしてるんだ」


「コンクール?美術部で参加するのか?」


「そうだよ、今回は[花]がテーマだから6月といえばということでアジサイにしたんだ」


みーちゃんは描いていた道具を隣によけ俺に描いた絵を見せた。


みーちゃんの描いた絵には紫や青、赤などといったじつにアジサイらしい感じの絵になっていた。雨を表現しているのか、所々白をぼかして描いてあってリアリティが増している。


「へー、綺麗に描けてるね」


「でしょ!この雨を表現するのとても苦労したんだ〜」


 などと会話をしながら一馬は暇な時間を、みーちゃんはコンクール提出用の絵を完成させていった。


1時間くらいたった頃だろう、ポツポツという音が聞こえてきた。


「雨降ってきたな」


「えー!」


 俺の一言に驚いたのだろうか、みーちゃんは慌てて窓の方までかけていく


「今日傘ないんだよね、濡れて帰るしかないか......」


「俺、今日傘あるけど一緒に帰る?それ終わったら」


「え!いいの?じゃあお言葉に甘えるね!ありがと」


 そう言うとみーちゃんは筆の動きを早めて色を塗り始めた。それからほんの10分くらいで絵を完成させた。


「ほんとに早く終わったな‪w」


「傘入れてもらうんだし早く終わらせないとね」


「そんな急いで、絵の完成度は落ちなかったのか?」


「多分大丈夫!今回も入賞すると思うよ」


「マジか、ちゃんと入賞したらどっか遊びに行くか」


「うん!」


 愛愛傘をしながら男女二人が帰っていたら、周りから見ている人は俺たちのことを確実にカップルかなんかと勘違いするだろう。


だが、そんなことを考えることよりも澪との会話がものすごく楽しかった。


「なんでかずくん一人で笑ってるの?」


「え!?いや、別に笑ってないよ?‪w」


みーちゃんとの会話が懐かしくて楽しかったなんて口が裂けても言えないな。


「今日は送ってくれてありがとね!」


「いいよ、また明日学校でね」


「うん、バイバ〜イ」


みーちゃんが扉を閉めるまで見送った後、俺も帰路に着いた。


「たまにはこういうのがあってもいいかもな」






続く


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