6月 放課後
今日終了の
一馬と柊は、家に帰らず2人で学校の中を回っている、放課後になる少し前に一馬は柊から「学校の中でも案内してやるよ」と誘われていたのだ。
「まずはどこへ行くんだ?」
「んー、そうだな……テニス部にでも行っとく?」
「おい、お前それって……」
時すでに遅し、一馬が手を伸ばして止めようと試みた頃には柊は階段のところまで行っていた。
一馬も柊を追いかけ校舎の中で鬼ごっこでもしているようだった、そしてやっと捕まえたのは下駄箱付近。
「お前ほんとに行くのか?」
「当たり前だとも、まぁ一馬がいればなんとかなるさ」
何を根拠に言っているかも分からない言葉を発し、柊は一馬の手首をつかみテニスコートに引っ張って行った。
「(もう、どうにでもなれ……)」
それから腕を引っ張られるままテニスコートまで連れてこられた。
コートは全部で4面、男子が奥側、女子が入口側で2面ずつで使用している。
その女子側のコートに見知った顔が1人……
「はいっ!」
力強い、かわいい声でテニスボールを打っているのは、沙希だった。
「白川さんってテニスうまいんだな」
「みたいだな、この前も県でベスト
しばらくテニスの打ち合いを見ているとボールを打ち切った沙希が「10分休憩ー」と言い、後ろにあるベンチに戻った、その時一馬と一瞬目が合い、少し怒ったような表情でこちらまで歩いてきた。
「ちょっとあなた達何してるの!」
「おっす!委員長見学してたよ」
柊はこちらに向かってくる沙希に手を振り悪びれる様子もなく答えた。
「おっす!じゃないわよ、石山くんはともかく九条くんまで、どういうつもり?」
「えっと、これはですね、その、柊に学校の中を案内してもらっている途中で……」
あたふたしながら沙希に説明していると、
「あれ?おにぃじゃん、なんでこんな所にいるの?」
奥の方から結月と結月の友達?がこちらまで歩いてきた。
「あ、何してるんだ?こんな所で」
「それはこっちの台詞だよ、おにぃこそ何しにしたの?」
「俺はこいつに学校案内してもらってたんだよ」
「あー、じゃああたしと同じだねあたしも案内してもらってたんだ!」
と言うと、結月の後ろに隠れている女の子を無理やり前に引っ張り出して紹介し始める。
「この子は
言われてすぐ一馬は、腕をくみ眉間にシワを寄せながら考えていると、結月は大きな溜息をつき一馬を見上げた。
「本当に覚えてないの?あの子だよ、ほらよくあの三角公園で遊んでたじゃん!」
「あー!思い出した、あの泣き虫だった彩葉ちゃん?」
「言い方悪いけど、うん合ってるよ」
「昔と雰囲気全然違うからわからなかったよ、ごめんね」
「い、いえそんな、大丈夫ですよ」
一馬は体を90度に曲げ謝罪したので、ちょっと困っていたけど、首を横に振った。
「ん?」
と、ここで一馬の頭の中に1つ疑問ができた。
「さっき苗字を白川って言ってたけどもしかして白川さんの妹って……」
「えぇ、彩葉は私の妹だけどあなた達知り合いだったのね」
沙希が彩葉に顔を向ける。
「うん、家の近くの公園で初めて会ったんだ」
彩葉は顔を緩ませ、笑っていると言うより少しニヤついているように答えた。
「あれれ〜、彩葉ちゃん何ニヤニヤしてんの〜」
「そ、そ、そんなニヤニヤだなんてしてないよ!」
結月がからかうように言うと「そんなに?」って思うくらい動揺していた、その顔を見るやまた結月が彩葉ちゃんをからかい始める。
「結月ちゃんもう勘弁してよー!!」
「えー、そんなこと言わずにさーホレホレ〜」
彩葉ちゃんの悲しみの叫びと、結月の猛アタックの声が狭いテニスコートに響き渡り、俺を含め柊や、沙希さんも大笑いし、今日は編入初日とは思えないほど笑って帰宅した。
続く
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