第38話 魅力に引き込まれる
お酒を飲みつまみを食べながら、
健斗は卓に仕事の話題を振った。
「卓ってどんなデザイン作ってんの?」
「ん?俺か?
主に会社の広告用のデザインが多いかなー。
ポスターとか、名刺とかかな。」
「へー、どんなん?なんかある?」
「あー、パソコンにデザインデータあるよ。見るか?」
「お、見たい。」
卓がリビングの端にある棚からパソコンを取り、
健斗と90度の角度になる位置に座った。
「見せられるのって言ったらこんなところのかな?」
健斗は卓のパソコンでデザインを見た時、驚いた。
そのデザインは、1年か2年前に電車の車内で見た企業広告だった。
「これって…電車の…」
「そうそう、これは電車の掲示広告。見たことある?」
見たこともあるも、
健斗はこの広告を見た時に色遣いやデザインの斬新さとわかりやすさに
衝撃を受けていた。
だから、この広告のことを覚えていた。
「お前、すごいな。
これを見た時、こんなんをどんな奴が作ったんか想像したくらい俺は魅力を感じたよ。」
そのデザインを卓がしたことを知り、
健斗は今まで以上に卓に尊敬の念を抱いた。
「あはは、ほめ過ぎ。」
「いや、まじで。他のは?」
「他のかー、欲しがりだな。」
褒められて機嫌がよくなった卓は、
健斗の方に寄せたパソコンに近づいて次に見せられる自分のデザインを探した。
「いいじゃん、見せてよ。」
「んじゃ、あ、佳代の会社の広告なら…」
卓が見せた佐藤の会社の広告は、
パステルカラーがベースでターゲットがおしゃれな女性、
美容系の会社と一目でわかるデザインだった。
電車の中で見た広告とは全く趣旨もインパクトも異なる物。
一枚の広告で見た者の興味をそそり、
幅広い職種の宣伝や目的を表現してしまう卓。
「すごっ…。お前ってこんな才能があったんだな…。」
「はは、ありがとう。」
と言いながら、卓は照れくさそうに笑いながら、
頬と耳を赤くしてうつむいた。
パソコンから卓へ視線をずらした瞬間、
健斗の想像以上に卓が近く、
照れたきれいな顔立ちの卓の顔に健斗は佐藤が転びそうになったときに
支えた時のような鼓動の高鳴りに似た感覚を感じた。
卓を見てはいけないと脳は指示を出すが健斗の眼は卓から離れなず、
心臓は高鳴りを増した。
卓が目線を健斗に向け2人の視線が合うことを恐れながらも
健斗の眼は卓に釘付けになった。
もっと見ていたいと思うほど。
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