第36話 意外な卓の反応
ピーンポーン
健斗はインターホンを押した。
ガチャ
「宅配でーす。」
ドアが開くタイミングで先に健斗が声をかけた。
顔を出したのは、卓。
家にずっといたのか、
スエットとラフな格好で登場した。
「待ってましたー。
って、まじでごめん。」
焼き肉屋を予定し、
卓が店に電話したが予約がいっぱいで入ることができず。
数店舗問い合わせたが空振りに終わり、
結局、
店探しも面倒になり卓の家を知っている健斗がに来ることになった。
「別にいいよ。卓の家だと気楽だし。」
「そう言ってもらえるなら…どうぞ。」
卓が健斗を招きながら、
先を歩いた。
足が治ったようで、
もう普通に歩いている。
以前来た時に見たチョコンチョコンと歩く卓の後ろ姿を思い出し、
健斗は1人で声を出さず笑った。
「足、治ってよかったな。」
「おぉ、もう体重が一気にかからない限りは大丈夫。」
「そっか。」
2人は手際よく宅呑みの準備をこなした。
今回は、ダイニングテーブルではなく、
コーヒーテーブルの方に料理・飲み物などを並べた。
「んじゃ、おつかれー」
「うぃ、おつかれー」
お決まりのビールでまずは乾杯してグイグイ飲んだ。
「はー、うまい。
にしても、めずらしいな。」
「え?なにが?」
「お前が用事もなく俺の足を気にしてメールしてくるなんて。」
「ははは。そうか?」
言葉が見つからず適当に答え、
だよなーっと健斗は心の中で思った。
卓に健斗の行動の違和感を感じ取られると推測し、
散々、卓にメールを送るかやめるか迷った。
「俺の中の記憶だと、
わざわざ調子がどうかなんて聞かれた覚えがなかった気がする。」
「そうか?
まぁ、そういう時もあるって。
気まぐれ?みたいな?」
「ふーん。
ちょうど暇で困ってたから助かった。」
2人はサラミやスモークサーモンのつまみや、
から揚げを突きながら会話を進めた。
「そういえば、
先週、佐藤とごはん行った。」
「え、まじ?もう??」
健斗にとってこの反応は意外だった。
てっきり、佐藤が卓に健斗と会ったことを話したと思っていた。
「実は俺がゲイってシノに話したって佳代に伝えたんだよ。
それでかな…?
佐藤がお前を誘った?」
「いや、俺が誘った。
なんか会いたいなーって思って。」
「ふーん、佐藤が好きなのか?」
「え?」
「え?」
健斗の反応に対して、卓も同じ反応をした。
2人の視線が合うが、
健斗はすぐに視線をはずし一点を見て、考え込んだ。
「あ…あぁ…」
佐藤は楽しくて会いたいと思う存在ではあるが、
そういう感情があるのか深く考えていなかった。
健斗が明確は返答をせず、
卓は黙っていた。
「うーん…よくわからん。」
「ふーん。」
卓の反応は、ものすごく淡白だった。
健斗の中の卓は、
佐藤のことを大切な存在と位置付けていて、
もっと佐藤が好きかどうか確認するかと思ったが、
あっさりした反応が健斗にとっては再び意外だった。
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