第35話 グズグズする
佐藤と飲みに行ってから、約1週間が経った。
健斗から佐藤に連絡することもなく、
佐藤からも連絡なかった。
日曜日なのに予定がなく、
お気に入りのカフェへ行こうとも思ったが面倒になり、
結局プー丸と家で過ごしている。
午前中、プー丸は健斗にかまって遊んだりしたが、
昼前には自分のゲージの中で寝てしまった。
午後からテレビをつけては、チャンネルを変えてすぐ消す。
部屋の片づけを一部しては、ソファーに座る。
スマホでネットを見ては、やめる。
スマホでメッセージを途中まで入力しては、消す。
スマホでメッセージを途中まで入力しては、消す。
スマホでメッセージを途中まで入力しては、消す。
健斗はこの行動を別の動作の合間に何回か繰り返していた。
この行動の原因は不意に気になる卓だった。
佐藤の時間が楽しくて、
健斗はまた会いたいと思う気持ちもあったが…。
卓は意識していないはずの存在なのに、
メッセージを送ったら意識していると
思われるのではないかと考えてしまい、
メッセージを完成させることも
送信することもできない状態でいた。
「はー。」
健斗はソファーに横たわり、ため息をついた。
卓に対して中途半端な行動も
考えることも今まで経験したことがなく、
疲れていた。
「どーっすっよ。プー丸。」
名前を呼ばれて、
プー丸が目線だけ健斗に向けた。
「こっち、おいでー。」
プー丸は動かず、健斗を見ている。
健斗がゲージに近づき、
プー丸を抱き上げた。
「はー。自分から行ってみるかー?」
ソファーに座って、
プー丸を膝の上に乗せ、スマホを手に取った。
『卓、足の怪我の調子どう?よくなった?』
送信ボタンを押した。
健斗はこの単純なメールが送れなかった。
ポロン。
『だいぶよくなった。
ありがとう。』
卓からすぐに返信が来た。
健斗の気分は高揚し、
膝上のプー丸をガシガシ撫でた。
『それは、よかった。』
ポロン。
『今日、暇なんだけど、
シノよければ、ごはん行かない?』
『もちろんOK!』っと送りそうになったが、
『いいよ。』だった。
『どこで何時にする?』
『合わせるよ。』
と送信しつつ、健斗はふと卓の部屋を思い出した。
『18時に、この前の焼き肉屋でもいいか?』
『いいよー。』
『じゃ、あとで。』
卓とメールのやり取りをしつつ、
健斗の口角が上がっていた。
健斗はプー丸に弾んだ声で話しかけた。
「プー丸、俺、夕方出かけてくるな。
留守番よろしく。ムニュー。」
と、言いながら両手でプー丸の首から顔にかけて毛を逆立てた。
「お前はいつもかわいいし、お利口さんだな。」
何もせずただ黙って健斗にされるがままの状態のプー丸は、
なぜか褒められた。
健斗は着替え直した。
何を着ていくか、プー丸に服を見せながら…。
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