第28話 卓と佐藤の関係の真実
2時間ほどお酒を飲みながら、
卓と健斗は珍しく恋愛の話になった。
結局、健斗の行きつく先は“振られた”で終り、
卓は、“こじれる”で終わる。
健斗は卓がゲイかもと気づいた時の疑問を口にした。
「ところで、
なんで佐藤と付き合ってた?
そん時はまだ、ゲイって気づいてなかった?」
卓はやっぱり聞かれたかと気まずい表情を浮かばせた。
「あれは…なんていうか…」
「うん。」
「ゲイって気づいてたからの手段ってやつ?」
「は?」
健斗は意味がわからず、口を無防備に開けきょとんとした。
「佳代も俺がゲイって気づいてて、
俺を守るために付き合っててくれたような、
付き合ってない。」
「え?じゃ、付き合ってるけど付き合ってなかったってこと?」
「ま、そういうことだな。」
「意味わからん。高校生でそれってすごいな。」
「佳代の提案で、俺はそれに甘んじた感じ。
あいつ本当、機転利くし優しいな。」
「いや、そこか?
そうかもしれんけど…。」
「当時、ゲイってばれてたら、
大変なことになってたと思う。
いじめだったり、嫌われたり。
でも、佳代が恋人でいてくれたら、
もし俺がそういう素振りを出しても、
佳代がいるから違うだろうって思ってもらえるだろ?」
「まぁ、そうだけど。」
「高校生の俺は、ゲイである危険性をそこまで考えてなかった。
でも、好きな人を目で無意識に追ったり、
表情が違ったりしてて佳代がやばいって教えてくれた。」
「ふーん、俺はお前のそういう行動、
ぜんっぜん気づかなかった。
女って鋭すぎ。」
「シノが鈍感過ぎなんじゃない?
散々、3人で帰ったり遊びに行ったりしてたけど、
俺ら一回も高校の時に手つないだことなかった。」
「え?そうだっけ?」
「そうだよ、シノは全く違和感とか感じてなかったもんな。
そもそも大学入ってから、
佳代のこと話てないでしょ?
順調とか、別れたとか。」
「はぁ…そう言われてみれば…?」
「高校卒業したら、
佳代と俺の目的は達成されたから、
そのまま終わった。
大学入ってからは、
俺もだいぶうまくふるまえるようになったしな。」
「ふーん、友達でも、
高校にいる2年くらい付き合っている状態にして、
卓を守るのって佐藤はなぜそこまで…」
「うーん…なんでだろう。
聞いたことないから知らないけど、
俺にとって佳代は恩人で、大切な友だち。」
「そういう友だちがいるってすごいことだな。
付き合っている以上の関係というか…」
佐藤は自ら卓のゲイに気づいていたにせよ、
健斗が約20年の間2人の蚊帳の外にされた気がして、
胸がチクリと感じた。
「俺にとって、シノも佳代と同じくらい大切な友だちだ。
妬くなって。
シノのことも大好きだよ~」
「おんまえ、バーカ。
まじ冗談やめろ。」
2人は、お酒を飲みながら笑い、
卓がゲイとカミングアウトしてから生じたわだかまりは、
一気にないものになった。
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