第26話 怖くて話せない事実
「ほら、全然、わかってないでしょ。」
卓が再びクスっと笑いながら、
健斗に声をかけた。
健斗は現実の世界に戻り、
卓を再び見た。
「…あ、あぁ…」
「いいよ、それで。
それでいてほしかったから。
シノには知られたくなかった。
いつかは話す時が来るし、話すべきって思ってたけど、
そのいつかがわからなかった。」
「いつか話すって、なんだそれ。
ずっと隠してどうしたっかんだよ。」
健斗は卓の話す内容が理解できず、
何も話してくれなかった卓に少しいらだちを感じた。
「シノにはわからないよ。
ゲイの世界わからないだろ?」
「わからないけど…」
「わからない奴に話して、どうやって理解してもうんだよ。
偏見や差別のある中で、
話して大切な存在がいなくなる怖さわかるか?
拒絶される怖さわかるか?
どうやってシノの関係を保つか模索して、ばれた時の怖さを抱えて、
自分を偽る辛さ、何もわからないだろ?」
卓の言うことは健斗にとって図星だった。
率直に卓がゲイであることを健斗に話していたら、
健斗がそのままの卓を受け入れていたか、
卓を見る時の健斗の中の卓が変化していなかったか疑問を感じた。
そして、
卓が悩んだ末に出した“話さない”という決意の重みを
健斗は軽く考えていた。
「俺、最低だな。
俺の感覚が普通というか基準だったし、
卓もそうだと思ってた。
気にしてもなかった。
お前は悩んだり迷ったり苦しかったのに、
俺は何も話してくれなかったお前をさっき責めた。
ごめん。」
「うん…。」
2人の沈黙が部屋の時計の秒針の音を響かせた。
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