第22話 宅呑み
佐藤・卓と焼き肉屋に行ってから約2か月が経ち、
卓と飲みに行く約束をしていた4日前に卓からメールが来た。
『フットサルして足捻挫した。
足を楽にしてたいから、
延期か、俺ん家かお前ん家で飲みにしたいけど、
どれがいい?』
健斗は蒸し暑い中スポーツをする暑苦しさと
捻挫をするほど懸命にフットサルをする卓の姿をイメージしクスっと笑った。
『まじか。
俺もどっちでもいい。
もし飲むなら、そっち行くし。』
『それだと助かる。』
『んじゃ、決まりな。
また住所とお酒とかいるもの入れといて。』
健斗は卓に教えられた住所までやってきて、
2回目のインターホンを鳴らした。
ピーンポーン
「はーい、今開ける。」
ガチャ
「ごめんな。」
「おう。」
卓の左足はテーピングされており
チョンチョンと右足に重心をかけながら
自宅の廊下を卓が歩き健斗を招いた。
後ろから見る卓はチョコンチョコンと不安定な動きをしており、
健斗は卓が子どものようにかわいく思えた。
「ふっ、痛そうだな。」
「地味に痛い。」
卓の家のリビングは寝室とスライドドアで仕切るタイプで、
寝室のドアは閉まっている。
リビングは木製家具、クッションや椅子などは深い色味で統一され、
卓の落ち着いた暖かいイメージと合っている。
その雰囲気に健斗は安堵感と親近感を抱いた。
「卓はどっちが楽?こっちかあっち。」
自然と健斗は卓の足を気にかけていた。
「あー、俺はとりあえず椅子かな。」
「んじゃ、こっちで飲もう。
俺、ビールと、缶チューハイと…適当に食べ物も買ってきた。」
2人ともワインや日本酒を飲まないことを健斗は知っている。
「助かる。ありがとう。
うちはカクテルのベース数種とジュースならあるから、
適当に割って自由に飲んで。
もちろん冷蔵庫の中も自由にしていいから。
俺はまずつまみ用意するから、シノは物運んでくれる?」
「んー、了解。」
卓がキッチンで食べ物を皿に移し、
健斗が取り皿や箸などを卓に渡されながらテーブルに並べた。
2人とも家事を普段しているせいか手際がよく、
すぐに飲み始めることができた。
「んじゃ、かんぱーい。」
と卓の掛け声で缶のままのビールを軽く当て、飲んだ。
大きく一口飲んでから、先に健斗が声を出す。
「やっぱ、うまい。
昔は苦手だったけど、歳とってからうまいのな。」
「あ、俺も。
この独特な苦みや味が今はうまい。」
「で、いまだにフットサルやってたんだな。」
「んー、月1か2回くらいだけど。
今回の捻挫で最後かも。」
「え、なんで?」
「捻挫って癖になるんだよなー。
小学校でサッカー始めてずっとやってて、
大学からフットサルにしたけど、
やっぱ限界っぽい。
だから、やめよーって思った。」
「ふーん、そんなもんなんだな。」
「そんなもん。
シノはスポーツしないから、興味ないだろ。
捻挫って結構痛いんだぞ。」
「ふーん、無理しない方がいいんじゃない?
若くないんだし。」
「そうだな、歳を受け止めるよ。」
健斗は卓と話すとき、
卓の部屋の空間のせいか
自然体であることに居心地の良さを感じていた。
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