第17話 佐藤の過去

コンコン

「おまたせしました。

大根サラダと、ネギタン、ロース、肩サンカク、ザブトンです。」


こういうタイミングに限って、邪魔が入る。


「私サラダ分けるね。」

と言って、佐藤がサラダを3等分した。


その間に、卓がタンを人数分網に並べた。

「あとは勝手に好きなタイミングで食べて。」


見事な連携だと、健斗は関心した。


佐藤が健斗の質問に答えた。

「で、うちらの関係?なんもないよ。」


「そうだな、シノとは大卒後も2年くらい会ったりしてたけど、

会わなくなっちゃったもんなー。

その後も今も佳代とは何もない。」


あっさりとした答えで健斗は、

ぎこちない気持ちがなくなったのを感じた。

「そっか。」


3人が肉やサラダを食べながら、

さらに追加注文しつつ、

高校時代の話や今の仕事の話をした。

卓がふと、健斗に質問した。

「で、シノは、今、彼女は?」


昨日の今日のタイミングの質問。

健斗はどう返事するか迷う。


「うーーーん、いない。」

陽菜とのことを説明するのも、

質問されるのも面倒と判断した結果の答えだった。


「そっか、いないのか。」


「もしかして、卓もいないのか?」


「あー、いない。なかなか難しいな。」

と答える卓を佐藤が横からのぞき込んで笑っている。


「なんだよ。」


「なーんでもない。」

と意味ありげに佐藤が答えた。


卓がムスっとし、健斗は話題を変えた。

「もしかして、うちら3人とも独身?」


「ん???今はね。」と佐藤が答えた。


「え??今は?」


「うん、私が結婚してた。

5・6年前に離婚しちゃった。」


健斗は申し訳なく答えた。

「そっか、ごめん。話題が悪かった。」


「ん?いいよ、6年近くも前のことだから、もう整理ついてる。

子どもがいなかったせいか、

お互いの気持ちのせいか、

思ったよりあっさりてた。

離婚って。

あー、でも苗字変更は面倒だったかなー。」


淡白に説明する佐藤に対し、

結婚も離婚も経験したことのない健斗は、

どう反応していいのかわからず、

それ以上この話を広げることはできなかった。


「そういえば、

すーちゃんと飲むようになったのって

離婚して少ししてからだよね。」


「そうだな、佳代が離婚後に事業起こして、

広告のことで連絡もらってからだったな。」


「なんか早いね。

一緒にいた高校の時は未成年で飲めなかったのに、

再会してからは飲み友達って…

なんかおっさんくさい。」


「うーん、否定はできんな。

俺らリアルにおっさんだし。」


「俺らって…私は違う。

おっさんにはなれないから。」


2人の会話を聞いて、

高校時代によく3人で過ごした時が蘇ってきたようで、

健斗はうれしくなった。


「ニタニタしてて、気持ち悪い。」と佐藤が健斗を見て言った。

健斗は無意識にうれしい気持ちが表情に出ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る