第9話 彼女、佐藤
『シノン、メールありがとう。
来ないかと思ったからうれしかったよ。
明後日の日曜にすーちゃんと会うから、
シノンも来る?』
佐藤は高校の時から卓をすーちゃんと呼んでいた。
その呼び方が今も変わらず、
今でも会う仲であると知り、
佐藤と卓と自分の間に距離を感じた。
そんな2人の時間に自分が入ってよいものか、
アウェイにならないか気にした。
何より明日陽菜とデートして、
先週末早く帰ったから間違いなく
明日のデートから日曜にかけては一緒に過ごすことになる。
健斗の中に陽菜と一緒にいてあげたいと思う気持ちもある。
迷ったが、2人に会いたいという気持ちも消せなかった。
健斗の答えは、
『ごめん、彼女とデートがある』ではなく、
『予定が合えば行きたいが、
時間や店は決まってる?』だった。
健斗はドリアを再び食べ始め、
陽菜のメッセージを確認した。
『うん、行きたい。
おいしいの食べたーい。』
『それじゃ、決まりね。
8時に家に迎えに行くでいい?
昼に間に合うように出発したいから。』
『8時大丈夫だよー』
健斗はすべてのドリアを食べ終えたが、
少し食べたりない感じがし、
フライドポテトを追加した。
佐藤から返信が来るかもしれない状況で
ファミレスを出る気がしなかったのかもしれない。
佐藤からのメールはなく、
陽菜にメッセージを送った。
『家着いたら連絡するよ。』
『うん、よろしくね。』
陽菜とのやりとりが終わったころ、
佐藤からのメールを受信した。
『19時からだよ。
○○駅近くのいろんなお肉が食べられる店。
https://niku======』
メール内のURLをクリックすると
そこに写ったのは“焼き肉屋”だった。
佐藤の“焼き肉屋”を“いろんなお肉が食べられる店"という表現に
健斗の笑いのツボは刺激された。
笑っている姿が何も知らないファミレス店員や他の客には不気味と気づき、
震える肩と緩む口を力で抑え込んだ。
鼻から長い息を吐き、健斗は落ち着きを戻した。
『わかったよ、いけたら行く。』
健斗が送信してから、佐藤からの返信はなかった。
健斗は佐藤の電話番号・アドレスの情報を登録し、
フライドポテトを食べながら、
健斗の頭の中は日曜に2人に会えたら何を話そうかと考えていた。
その時間に陽菜とのプランが思考回路に割り込むことはなかった。
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