第3話 グズグズの会話

健斗は彼女の陽菜と合流して、

キッシュとビーフシチューがおいしいと人気のレストランをネットで見つけた

陽菜の希望でそのお店でランチをすることにした。

陽菜はさんざん何を頼むか悩んだ挙句、レストラン人気No1のキッシュにした。

健斗は考えるのがめんどくさく、No2のビーフシチューにした。

料理が運ばれ食べ始めた時、唐突に陽菜が健斗に話しかけた。


「ねぇ、健斗、このあと映画見に行かなーい?」


「ん?いいよー。」


「何の映画がいいかな?」


「陽菜が見たい映画でいい。」


「えー、健斗も少しは考えてよー。

何がいい?」


「え?俺、特に見たい映画ないし。

陽菜が行きたいって言ったんだから、陽菜の見たいのでいいよ。

むしろ、見たい映画があるのかと思ったけど。」


「もー、いい。」


陽菜はムスっとした表情をし、そっけなく言った。

その後キッシュを切ろうと陽菜はナイフを差し込むが、

ベースの生地が固くなかなか切れず、

力を押し込んだ時一気にナイフが皿に当たり、

ガチンと音が立った。


音が収まると、

陽菜は切れたキッシュを食べることなく健斗に聞いた。

「健斗って、なんでそうやって適当に答えるの?」


「は?適当なつもりはないけど。」


「適当じゃん!

私が何が見たいか聞いてもなんでもいいみたいな返事して。」


健斗は陽菜の言う通り“なんでもいい”=陽菜が選択すればいいと思っており、

なんと返事していいのかわからず、黙った。


「いつもそうだよね、健斗って」


「なんで、いつもそうやって私任せっていうか、

興味ないような言い方するの?」


「そんなつもりはないけど。」


「健斗にそんなつもりなかったら、

こんなやりとりになってない気がする。」


「ごめん、俺の言い方が悪かった。

陽菜に興味がないわけでも、映画が見たくないわけでもないよ。」


陽菜は不満顔だ。

目の前のキッシュプレートに乗ったレタスを突いて、食べない。


「陽菜の見たい映画を俺も見たいと思ったし、

陽菜と過ごせるならどんな映画でもいいと思ったから、

陽菜の見たい映画でいいと言ったんだよ。」


「ふーん…

んじゃ、また何の映画が見たいか考えとくね。」


映画が見たいと言ったにもかかわらず、

結局見たい映画は考えておくと言ったり、

健斗の返事の表現で陽菜に対する気持ちを試そうとする陽菜に健斗は困惑し、

固まった。


「ん?どうしたの?健斗、食べないの?」


「あ、食べるよ。」


健斗は前の彼女とのやり取りでも数回似た状況になり、

結局、「健斗の気持ちがわらかない」と言われて2年前にふられていた。

女性の気持ちも望むものもわからず考えたが結局答えが出ていない。


「この後、何しようね?」


「うん、何しようか。」


「健斗は何したい?」


「陽菜が服とか見たいなら買い物もいいし、

動物園とか行くのもいいかも。」


「うーん…水族館に行きたい。

どうかな?」


陽菜は大きな目を輝かせながら提案し、健斗に微笑んだ。

YES以外は聞きたくないと言ってる表情だ。


「うん、いいね、水族館。」


健斗は水族館と決定するまでのやり取りで疲労を感じ、

静かにビーフシチューを食べることに集中しようとした矢先、


「健斗のビーフシチューも食べてみたい」と陽菜が言った。


健斗の本意は自分の料理はシェアせず食べたいが、

断ったあとのやりとりが面倒になるとわかっており、

必ず毎回健斗の返事は決まってる。


「うん、いいよ」

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