異次元からチョコレートがやってきた

ある日ポストを覗くとなにか黒いパッケージの小包が入っていた。


なにか注文でもしたかなぁとも考えたが思いあたる事がまったくない。


「あっ猫よぉ。」


ちょうどよく猫がいたので話しかける。


「なんだ。」


「ポストの中になんか入ってるんだよ。」


「怪しい。」


「怪しいなぁ今時チャイムも鳴らさないお届け物は。まぁ開けてみるか。」


今日はなんと言ってもバレンタインである。女の子からのお届け物かもしれない。


「中は普通のクランチチョコみたいだな。」


「お前がモテる訳ないからそれは異次元人からの贈り物だな。」


「異次元人から?」


「そうなんだよ。よく分からないチョコレートの贈り物はだいたい異次元人からの贈り物なんだよな。」


「なんで俺宛に異次元人からの贈り物が届いたんだよ。」


「それはお前が活躍したところをちょどよく切り取って見てる異次元人がいるからだよ。よくある話だ。」


「ふーん。」


俺はちょっと考えて言う。


「じゃあ異次元人は俺がうんこをしているところも見てるのか…?」


「知らねーよ多分見ないだろ。」


「俺のかっこいいところだけ切り取ってうんこしてるところは見てないなんて都合のいい話があるのかよ。」


「かっこいい時なんてなかった気がするが。」


「まぁ詐欺とかじゃないならいいんだよ。異次元から来たなんて怪しいけどまぁちょっと観察ぐらいしてみるか。」


見たところ普通のチョコレートだ。


「お前食べる?」


「いや猫にチョコレートは毒だから遠慮するよ。」


「猫に毒なものを俺に食わそうとする異次元人なんなんだよ。」


「そこはまぁ人間だから大丈夫だろと思ったんだろ。バレンタインはいろんな時空にあり次元を超えてもチョコレートを送ることになってるんだ。」


「異次元から来たチョコなんて食べれるのかよ。こっちの次元では毒だとかそこらへん考えてるのか異次元人とやらは。」


チョコを1つ口に放り込んだ。


「あっ。」


「何?」


「いやなんでもないけど…」


もう一つ食べる。甘くて美味しい。


「しかし美味いなぁこれは。」


「お前は何に怒ってたの?」


「うん?」


「何に怒ってたの?」


「確かに怒っていた気がするがチョコレートが甘くて美味しいからどうでもよくなってきちゃったな。」


「お前がいいならそれでいいけどさ…。」


「なんか歯切れ悪いな…俺だけ食べてるからか?」


「いや俺猫だからチョコレート食べれないし。」


「そうだった!そんな事忘れてバクバク食べてごめんな。後は家で食べるよ。」


「食べるんだ…。」


「食べるが?」




「モテるって辛いねえという話か。」


俺は帰ってありがたくチョコレートを頂いたのだった。ありがとう異次元人。お返しはどうやって送ればいいのだろうか異次元人。

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まふうと猫とこの街と はんかうり @hancaulyy

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