第4話 必死に食らいつく

 数手の攻防を繰り返し、距離を置く俺とロサイン。


「……なるほど……初めて君と会った時よりもさらに成長を重ねているようだね……素晴らしい。伊達に異世界からやって来た訳ではないらしい……お互いにね」


 俺は油断なく構えを取り続ける。次はどう仕掛けるのがベストか。また、周りに奴以外の敵が潜んでいることはないか。神経の全てを戦闘に注ぐ。


「何が何でも……お前に勝つ……!」

「その意気込みは素晴らしい……だが」


 突如、俺の体が宙に浮かび上がった。その後、自分の胸元に衝撃が来たことを理解。ロサインの掌底打ちを食らっていた。

 ……見……見えない!?


 次の瞬間、宙に浮いた俺の体が叩き落とされた。胸の掌底打ちに続き、なぜかすでに俺の上にいるロサインによる両手拳を落とす攻撃。

 地面にぶち当たった俺の体が嘘みたいにバウンド。


 だが、その衝撃を感じる暇なく、俺の体はまた打ち上げられた。今度はロサインが下から蹴り上げていたのだ。

 はっ!? なんで!?


 その疑問を解消するより先。さっき地面で俺を蹴り上げていたはずのロサインが宙で俺を待っている。そのロサインの蹴りが俺に容赦なく叩き込まれた。


「がっ!?」

 激しく俺の体が大木に激突。肺が押しつぶされ、息を漏らす。


 ……なんてスピード……体どころか理解すら追いつかない……。


「どうしたのかな?」

「はっ!?」


 ロサインに俺の足を掴まれ振り回される。そのまま、別の大木に俺の体が投げ出された。


 激しい衝突。だが、痛がっている暇はない。追撃をしようと迫ってくるロサインが視界に見え、咄嗟に大木を蹴った。

 刹那、ロサインの拳が大木に衝突。もと俺が居た幹に亀裂が走る。


「んなろっ!!」

 その瞬間、右手をロサインめがけて突き出した。炎魔法が攻撃を木の幹にぶつけた瞬間のロサインめがけて飛んでいく。


「ハッ!?」

 ロサイン、見開き俺の攻撃を見る。すると、まだ運動エネルギーが残っているはずのロサインはその方向を転換。大木から弾けとんだロサインが俺の攻撃を紙一重でかわしていく。


「マジかよ!?」

 その勢いのまま迫ってくるロサインから距離を取るべく、今度は上に飛び上がった。


 横に吹き飛んでいた体に対し強引に上向きの力を加えたことにより発生するG。それだけで俺の脳が酸欠を起こしかけクラリとする。

 なのに、さっき移動方向を百八十度転換したロサインは特に苦もなく、俺を追いかけて空を飛んでくる。


「なんでだよっ!? クソッ!?

 両手をロサインに向けて突き出し、魔法弾を打ち放つ。だが、それをロサインは弾きながらさらに接近を重ねてくる。


 だが、ロサインの突き進む攻撃に一瞬隙を見つけた。その拳を避けつつ、掴みかかる。

「おぉっ!?」

「ダァリャァア!!」


 向かってくるロサインの勢いを利用し手を掴んだままググリと回転。地面に向けてロサインを投げ飛ばした。


 地面に向かっていくロサイン。さらに俺も突き進む。


 ロサインが地面に当たる直前、方向転換し地面に着地する。だが、その瞬間の硬直を狙って蹴りを入れる。

 見事、ヒット。俺の蹴りがロサインの頬に当たる。


 俺とロサイン。ともに激しい横向きの運動エネルギーをもって地面スレスレを飛び交う。

 そこに俺はさらなる追撃を重ねようとした。


 だが、ロサインは地面に向けて攻撃を放った。その衝撃により自身の体にかかるベクトルをずらしてくる。

 浮かび上がるロサインの体。対して地面からえぐり取られた岩の破片が俺の体にあたっていく。


 俺の横向きエネルギーがそのまま続く中、ロサインが俺めがけて炎魔法を投げ入れてきた。


 咄嗟に行ったのはガード。その上に容赦なく魔法弾が叩き込まれる。


「グゥゥゥゥ……!?」

 炎の魔法弾はなおも俺の体を押し付けてくる。そのままどんどん俺の体宙向けて吹き飛んでいく。


「グゥォォォ……ダァアア!!」

 俺はその魔法弾を強引に上にずらし込んだ。ベクトルがそらされた炎の魔法弾が俺の上を擦過。そして、すぐ俺の後ろでその魔法弾は炸裂。俺の背後にて炎の爆発を感じていた。



「はぁ……はぁ……」

 空中にてなんとか息を整える。

 そんな俺に対して、少し離れた先の空にて黙って見据えるロサインがいた。


「はぁ……はぁ…………ふぅ……」

 落ち着きを取り戻し、俺よりもさらに上に位置取るロサインを見た。ロサインは特に息をあげることなく平然としている。

 だが、心なしか表情に変化が見られた。


「……これは……本当に驚いたよ。わたしに付いてこられる程にまでレベルを上げていたとはね」

「……」


 だが、その付いていくのが精一杯という事実は変わりない……。改めて、簡単には埋められない実力差を実感していた。

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