第3話 団長登場
バカでっかいクジラが空から降りてくる。そして、そのクジラの背中に設置された甲板より降りてくるダーカスたち。
「てめえ、先に飛んで町つくとか、いい度胸してんな」
「ッ!? ッ!? っ!?」
なんで今、俺は頭を掴みあげられなければいけないのだろうか……。
「まあ、いい。さっさと行くぞ。てめえの足であるけや!!」
「なら、降ろして歩かせて!?」
で、ダーカスによってどっかに連れて行かれるのだが、これまたなかなかの町だった。そりゃ高層ビルが立ち並ぶなんてものではないが、ガラス窓がちゃんとついたレンガの建物が淡々と並んでいる。
人の賑わいも相当なもので、街全体に活気があった。
そんな街中でも、結構大きくて目立つ建物の前に俺たちは立った。
「ゲルプイーグル団の支部だ」
そう言ってダーカスは俺たちを連れて入る。そしてずっと奥の部屋に通された。
その部屋にはひとつのデスク。椅子に悠々と座るのは羊人間、人羊種。かなり小さいも羊みたいな角が二本生えている。
「やあ、初めまして。ゲルプイーグル団の団長を勤めています、サハクといいます。よろしく」
団長サハクはそう言って立ち上がると、俺の前までやってきた。そして手を伸ばしてくる。
俺もその腕を握り返した。
「啓二です。よろしくお願いします」
この人が団長か……、誰かさんと違って優しそうな人だ……口が裂けても言えないが。
「って、あれ? なんで支部に団長が? 本部じゃなくて?」
「ええ、しばらくこちらの方で仕事がありましたので」
ということらしい。
「団長ってことは、やっぱり強いんですよね」
「いや、雑魚だ」
「雑魚ッ!?」
ダーカスに雑魚呼ばわりされたサハクが声を裏返すほどに同様していた。だが、すぐにひとつ咳込みを入れる。
「わたしの仕事は仕事の依頼を引っ張ってくること、依頼のまとめと采配、またゲルプイーグル団のまとめあげ、色々とこなすことはあるんですよ」
「ようは営業担当だ」
「……ダーカスくん、とことん言ってくれますね」
またコホンと咳込みを放つサハク。
「営業担当はまた、別にいます。この団の顔として認識していただければ結構ですよ」
「権力という椅子に居座るお偉いさんだな」
「ダーカスくん、しばらく口を閉じていてください」
サハクはビシッと指をダーカスに突き刺すと、再びデスクのほうに足を進めた。そしてそっと椅子に座る。
「さて、挨拶はこれぐらいにして、本題に入りましょう。あなたたち、ダーカスくんと愉快な仲間の皆さんをここに呼び出した理由です」
愉快な仲間呼ばわりされたセロとマトが一瞬表情を歪ませる。が、サハクはそれこそ愉快に笑う。
「ダーカスくんに散々言われたのでその仕返しです。文句があるならダーカスくんに言ってください」
だれも文句が言えないことはこの人も知っているだろうに……。とにかく、この人が狡猾な人物なのだろうということはよくわかった。
「で、君たちを呼んだ理由ですが、端的に言えばこの町の用心棒です。しばらくこの町に滞在し、平和を守ってもらいたい」
「……平和?」
マトがまっさきに疑問を投げかけた。
その答えを言うように、首を縦に振るサハク。
「実は最近、エリュトロンレオ団に不可解な噂や動きを見るようになりましてね」
その団の名前に俺含めた全員が反応した。数ヶ月前、俺とセロ、そしてマトが対峙した奴が所属している団だ。
「どうも彼らは、我々ゲルプイーグル団の管轄に意図して入り込もうとしているんですよ。
別に「友好関係を築きましょう」ならこちらも歓迎しますし、単純な依頼の横取りであったとしても百歩譲ってしばらく黙認しても構いません。
ですが、どうもそれ以上の動きがあるように思えるんです。明らかに……我々に敵意を向けているんですよ。
縄張りを広げようとでもしているのでしょうかね」
サハクがため息をつきながら、窓の外をちらりと見ていた。
「その関係で、こっちも報告することがある」
ダーカスが一歩前に出てサハクに視線を送る。
「なんでしょう?」
「ついこないだ、エリュトロンレオのコウモリをぶっ倒した。今は町の行政に送りつけてある。
俺たちの管轄領土を侵略しようとしていたみたいだな」
「……なるほど……それは……」
「ちなみに、マトの報告によれば、俺より強いやつだったとさ。ま、マトの目は腐ってないだろうから事実だな」
複雑そうな顔をするが、このダーカスもマトの実力を評価しているのだろう。だからこそ、こうはっきり言う。
「……やっぱり……わたしの情報網は正しいようですね。とにかく君たちにミッションを与えます。
この街にはびこるエリュトロンレオの人を見つけたら報告。不審な動きや情報を得てもすぐに報告するようにしてください」
そうして、俺(たち)の新しいミッションがくだされたのだった。
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